『大和、あの……』
しばらく大和は落ち込んでいた。
清香も心配していたが、気持ちがわかるだけに何も言えなかった。
『ご飯、一緒にいいかな?』
食堂にいる大和を見た時も、大和は清香を避けるようにしていた。
清香もまた落ち込んでいた。
まさかパンサーの一件でこんなことになるとは。
清香は大和が落ち着くまで、大和と会わないことを決めたのだった。
大和は部活に顔を出さなくなった。
流石に心配した清香はジョンに尋ねる。
『ヤマトを見てないんだけど、知ってる?』
ジョンはびくりと肩を震わせる。
「お、俺は知らない」
清香は疑問を抱きながらも別の選手に。
「知らない」
「しばらく、見てない」
「あいつのことなんて知るわけないだろ」
「学校でも見てないな」
次々と選手の口から出る言葉に清香は学校の事務室へと走った。
『あの大和は、タケル・ヤマトはいまどこに?』
「タケル・ヤマト……?そんな人、うちにはいないよ」
清香は絶望した。
なんでこんなことに?
学校自体から存在が消されているというのか。
そうなるまで放っておいたのは誰だ。
『私じゃん……!』
清香は理事室へ足を運んだ。
しかし理事長から帰ってきた言葉も同じようなものだった。
『嘘……嘘だよ』
大和の携帯に電話をかける。
“おかけになった電話は現在使われておりません”
無機質な声。
清香は寮の部屋に戻った。
そして人目をはばからずに、泣いた。
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