「危ないですね、おねーさん」
そう言った少年。
いや、少年というほど幼くはない。
セナとほぼ同じくらいの背丈だろうか。
しかし筋肉はこちらのほうがある。
特に足だ。
少年の手にはボール。
取ってくれたのだろう。
『あ、ありがとう少年』
「どういたしまして、新しいマネージャー…じゃないですよね?」
少年はボールを取りこぼした選手を一睨みすると、キッドに向かってボールを渡した。
こちらに歩いてくるキッド。
「ずいぶん遅かったね、寝坊かい」
「す、すんませんキッドさん!遅くまで試合のビデオ見てたら寝坊しちゃって」
キッドは清香のほうをみる。
「すまないね、レシーバーがボールを逸らした先にキミがいるとは思わなかったんだ」
『全然大丈夫!少年が取ってくれたからね!』
少年はずっこける。
「その少年っていうのやめません?なんか恥ずかしいっす」
そういうと少年は自己紹介を始めた。
「俺は甲斐谷陸、西部ワイルドガンマンズのランニングバックです」
そして清香に手を差し出す。
清香はそれを笑顔で握り返す。
『私は清香、さっきは助けてくれてありがとう』
「清香さんは西部ワイルドガンマンズの関係者なんすか?見たことないですけど」
そういうとキッドをちらりと見る。
キッドは肩を竦めた。
「王城のトレーナー兼マネージャーだよ、ここには観光に来てたんだ」
ほぼ事実だ。
甲斐谷陸は驚く。
「へえ!王城のマネージャーが偶然観光!偶然にしては出来すぎてませんか?」
そう言ってこちらを睨む甲斐谷陸。
『ごめんって!昼には出ていく予定だからさ、もうちょっと置いてよ甲斐谷陸くん』
そう言って甲斐谷陸の肩にぽんと手を置く。
「冗談っすよ。それと俺のことは陸でいいですから」
陸はそう言うとこちらを見てにやりと笑う。
いっぱい食わされたってわけですかそうですか。
清香は苦笑した。
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