7th down
「危ないですね、おねーさん」

そう言った少年。

いや、少年というほど幼くはない。

セナとほぼ同じくらいの背丈だろうか。

しかし筋肉はこちらのほうがある。

特に足だ。

少年の手にはボール。
取ってくれたのだろう。

『あ、ありがとう少年』

「どういたしまして、新しいマネージャー…じゃないですよね?」

少年はボールを取りこぼした選手を一睨みすると、キッドに向かってボールを渡した。

こちらに歩いてくるキッド。

「ずいぶん遅かったね、寝坊かい」

「す、すんませんキッドさん!遅くまで試合のビデオ見てたら寝坊しちゃって」

キッドは清香のほうをみる。

「すまないね、レシーバーがボールを逸らした先にキミがいるとは思わなかったんだ」

『全然大丈夫!少年が取ってくれたからね!』

少年はずっこける。

「その少年っていうのやめません?なんか恥ずかしいっす」

そういうと少年は自己紹介を始めた。

「俺は甲斐谷陸、西部ワイルドガンマンズのランニングバックです」

そして清香に手を差し出す。

清香はそれを笑顔で握り返す。

『私は清香、さっきは助けてくれてありがとう』

「清香さんは西部ワイルドガンマンズの関係者なんすか?見たことないですけど」

そういうとキッドをちらりと見る。

キッドは肩を竦めた。

「王城のトレーナー兼マネージャーだよ、ここには観光に来てたんだ」

ほぼ事実だ。

甲斐谷陸は驚く。

「へえ!王城のマネージャーが偶然観光!偶然にしては出来すぎてませんか?」

そう言ってこちらを睨む甲斐谷陸。

『ごめんって!昼には出ていく予定だからさ、もうちょっと置いてよ甲斐谷陸くん』

そう言って甲斐谷陸の肩にぽんと手を置く。

「冗談っすよ。それと俺のことは陸でいいですから」

陸はそう言うとこちらを見てにやりと笑う。

いっぱい食わされたってわけですかそうですか。

清香は苦笑した。



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