食事が終わる。
サラはいつもより口数が少なかった。
疑問に思いながらシャワーを浴び、部屋に戻ると清香のベッドの上にはサラ、勉強椅子に清十郎が座るという不思議な構図だった。
「おかえりー!セイジューローといっぱい話したわよ!」
『え、そうなの?どんな話?』
キャリーケースのなかに数日分の衣服を詰め込みながら片手ではタオルで髪を拭く。
「清香、大和は見つかったんだな」
『え!!』
清十郎の口から大和という言葉が出てきたことにおどろく。
「サラから聞いた。ノートルダムでのチームメイトなのだろう」
『そそ、そう!!チームメイトだから気になってて!』
どもりながら必死に喋る清香。
「どこにいたんだ」
『こないだ、帝黒で見つけたよ』
少し清十郎の目つきが変わる。
「だから早く帰ってきたんだな」
『うん…でも秘密にしてたわけじゃなくて、いずれ清十郎にも会わせたいんだ!』
清十郎の緊張感が緩む。
清香は安堵した。
「もしかしてキヨカ、言ってなかったの?」
『うん、言うタイミング失っちゃって』
あのあと清十郎から説教をされたせいだとは言わない。
「明日からアメリカに行くそうだな」
『うん、それに関しては清十郎が止めても無駄だからね』
清十郎は少し笑った。
そしてサラを見た。
「分かっている。サラから説得された。大切な用事があるのだろう」
『うん、ありがとうね清十郎』
満面の笑みを見せる清香。
それを見て清十郎も表情を緩めた。
「ただし8月1日からの富士山合宿にかならず間に合わせろ。これだけが俺が提示する条件だ」
『わかってる、巨大弓を完成させるにはそこが鍵だからね』
清香は思い出したように清十郎が座っている近くの勉強机の引き出しを開ける。
「キヨカ、なにそれ?」
『これは私が考えたスタミナアップトレーニングだよ』
「へえ!ちょっと見せて!」
さらに手渡すとサラは顔を輝かせる。
「これノートルダムで皆がやってたもの?」
『それに清十郎用のアレンジを加えたんだ』
サラは一通り目を通した後、それを清十郎に手渡す。
「…これの倍でいいな」
『というと思ったよ、清十郎ならね』
清香は軽く笑うとキャリーケースを閉めてサラと同様にベッドに乗った。
「日本のベッドフワフワね。寮のベッドが固かったからかしら」
『私もそれ思った!だから清十郎の部屋で寝た時も床で快適だったんだよね』
清十郎は清香が家に帰ってきたばかりの頃を思い出した。
だからあのとき慣れていると言っていたのか、と。
「それでは、俺はもう寝る。明日の朝は母さんが送ってくれるそうだ」
『そうなんだ!ありがとね清十郎!』
おやすみの一言とともに扉を閉める清十郎。
「Good night!」
『おやすみー!』
閉じられた扉に向かってそう言うと、清十郎の部屋の扉を閉める音が聞こえた。
「セイジューロー、私が思っていたよりも真面目だったわ」
『でしょ』
「でもあなたを心配する気持ちは凄いわね」
『過保護すぎる気もするんだけどね』
「そうね、それじゃ私たちも寝ましょ?」
サラは清香のベッドに潜り込む。
一緒に寝ることになってしまったようだった。
清香は苦笑しながら毛布を体にかけた。
手を伸ばして室内灯を消す。
二人は自然と眠りについた。
_to be continued
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