19th down
荷物をもってタクシー乗り場に行くと、すでにサラが待っていた。

「遅いわよキヨカ!」

『ごめん!帰ろっか!』

並んでいたタクシーに二人で乗り込む。

サラの荷物はタクシーの荷台に載せた。

「キヨカの弟に会えるのね!楽しみだわ」

『ちなみにどんな弟を想像してるの?』

うーんと考え込むサラ。

「キヨカよりしっかりしてそうよね」

『…せ、正解です』

「なんだか真面目そうよね」

『…はい、合ってます』

私って結構凄いじゃない!と軽く笑うサラ。

『とりあえず母さんに連絡するね、ちょっと待ってて』

「ええ」

プルルルルという音が2回した後、受話器が取られる。

“はい、進です”

電話に出るのはもちろん母さん。

清十郎がとったら今頃受話器は壊れている。

『もしもしー母さん。清香なんだけど、明日からアメリカに1週間弱だけ行くことになったよ』

“あら、そうなの?分かったわ、なにか用意しておくものあるかしら?”

相変わらずの順応性に舌を巻く。

『洋服とかは少し向こうで調達するね。キャリーケースだけで大丈夫!』

“分かったわ。何時に帰るの?”

『今帰ってる!あと15分くらいかな』

母さんは少し受話器を離す。

“清十郎ーあと15分くらいだそうよー”

『あっ母さん!あと一人友達が泊まりに行くんだけど、大丈夫だよね?』

母さんは声を弾ませる。

“あら、いいじゃない。待ってるわ”

それじゃ!と言い電話を切る。

サラは清香を見て笑顔を浮かべた。

「タケルにその顔見せたいわ」

『な、なんで?』

「その笑顔はアメリカで見たことないもの」

清香はそれを聞くと笑う。

今が楽しいんだろうな。

清香は考えた。

弟と並べていることが、とても嬉しいのだろう。

「思いあたる節があるみたいね」

『そう、だね』

サラはタクシーの座席に深く腰掛け直す。

「またノートルダムに行きたいわね」

『そうだね。今度は…大和も』

「そうね」


タクシーが家の前に止まった。


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