荷物をもってタクシー乗り場に行くと、すでにサラが待っていた。
「遅いわよキヨカ!」
『ごめん!帰ろっか!』
並んでいたタクシーに二人で乗り込む。
サラの荷物はタクシーの荷台に載せた。
「キヨカの弟に会えるのね!楽しみだわ」
『ちなみにどんな弟を想像してるの?』
うーんと考え込むサラ。
「キヨカよりしっかりしてそうよね」
『…せ、正解です』
「なんだか真面目そうよね」
『…はい、合ってます』
私って結構凄いじゃない!と軽く笑うサラ。
『とりあえず母さんに連絡するね、ちょっと待ってて』
「ええ」
プルルルルという音が2回した後、受話器が取られる。
“はい、進です”
電話に出るのはもちろん母さん。
清十郎がとったら今頃受話器は壊れている。
『もしもしー母さん。清香なんだけど、明日からアメリカに1週間弱だけ行くことになったよ』
“あら、そうなの?分かったわ、なにか用意しておくものあるかしら?”
相変わらずの順応性に舌を巻く。
『洋服とかは少し向こうで調達するね。キャリーケースだけで大丈夫!』
“分かったわ。何時に帰るの?”
『今帰ってる!あと15分くらいかな』
母さんは少し受話器を離す。
“清十郎ーあと15分くらいだそうよー”
『あっ母さん!あと一人友達が泊まりに行くんだけど、大丈夫だよね?』
母さんは声を弾ませる。
“あら、いいじゃない。待ってるわ”
それじゃ!と言い電話を切る。
サラは清香を見て笑顔を浮かべた。
「タケルにその顔見せたいわ」
『な、なんで?』
「その笑顔はアメリカで見たことないもの」
清香はそれを聞くと笑う。
今が楽しいんだろうな。
清香は考えた。
弟と並べていることが、とても嬉しいのだろう。
「思いあたる節があるみたいね」
『そう、だね』
サラはタクシーの座席に深く腰掛け直す。
「またノートルダムに行きたいわね」
『そうだね。今度は…大和も』
「そうね」
タクシーが家の前に止まった。
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