14th down
後半が始まり、エイリアンズのキックから試合が始まる。

泥門の攻撃に移り、早速スイープが決まる。

『黒木くんと戸叶くん、だっけ。いい感じだね!』

「清香ちゃんもそう思うかい?僕、雑誌に黒木と戸叶は落第って書いたんだけど、謝らないとな!」

アメフトは勝てば認められる。

それはアメリカンドリーム的な考え方をかなり取り入れたアメリカならではのスポーツであるということでもある。


スイープがどんどんと決まり、タッチダウンが決まる。

そのときだった。

エイリアンズ側のベンチでパンサーが土下座しているのを清香の目が捉えた。

そしてその頭に唾が吐かれるのも。

『アポロさん、いつになったら認めるのかな』


スイープに見せかけたパスも決まり、泥門はエイリアンズを逆転した。

清香は先ほどのパンサーがいた場所を見た。

そして目を見開いた。

エイリアンズの皆が土下座をしていた。


『パンサーくん、ホーマー…』

アポロは少し逡巡したが、出場を認めた。

『やっと出られたね、パンサーくん!』

清香の目にはとある光景が移っていた。





「あいつを止めろー!!!」

「パンサー、なんで走ってんだあいつ!」

「清香、俺は…いやなんでもないよ」

「あいつは、ヤマトは、いなくなったんだ」




「清香ちゃん!清香ちゃん!!」

『!あ、熊袋さん、どうしたんです?』

「大丈夫かい?そ、それよりあの20番のデータ持ってないかい!?」

フィールド上ではパンサーがタッチダウンを決めていた。

『パトリック・スペンサー、通称パンサー。NASAエイリアンズの…ランニングバックですよ』

「助かるよ!」

熊袋は解説に戻る。

パンサーの走りを複雑な感情で眺める清香。

セナとの戦いもパンサーが勝った。

『やっぱりまだ見るの少し辛いな。もう大和には会ったっていうのに』

試合は続く。

モン太に投げられたパスをパンサーが走り込み、インターセプトする。

パンサーのランを防ごうとする泥門メンバー。

しかし両面のせいでスタミナが残っていない。

『これで、終わりかな』

残り時間は30秒を切っている。

セナも倒された。

しかし、セナは倒されてすぐに体勢を立て直した。

『まさか』

そしてパンサーの片手もちの右手に向かって光速タックルをした。

清香は目を見開いた。

ファンブルされたボールは空中を舞い、セナの腕の中へ。

『いけ!!!』

最高速度のまま、逆サイドのエンドゾーンへ。

約100ヤードのロングランだ。

ホイッスルが鳴り響く。

清香は立ち上がっていた。

心臓はドクドクと脈打ち、とても興奮していた。

しかしすぐに我に返るとフィールドの下に向かって走り始めた。

『あの疲労の中、あんな走りをして!まだセナの身体じゃ耐えられないよ!』

フィールドに下りて泥門ベンチに行くと、案の定セナは倒れていた。

担架に駆け寄り、呼び掛ける。

『アイシールド21!大丈夫!?』

ベンチ横で慌てているまもりを落ち着かせる。

『まもり、氷のうを5つ持ってきて!』

「う、うん!待ってて!」

まもりの持ってきた氷のうを首裏、脚の付け根、脇の下、ふくらはぎに当てる。

『これでよし。疲労が少しはおさまるはずだよ』

フィールド上ではすでに試合が終わっていた。

結果は31-32で泥門の負け。

セナが勢いよく起き上がる。

『お疲れ様。よく頑張ったね、アイシールド21』

「清香…さん?し、試合は!結果は」

まもりは悲しげに首を横に降る。

『まもり、ちゃんと家に帰った後にもアイシングさせてね』

「分かったわ、伝えとくわね。ありがとう、清香ちゃん」

清香はエイリアンズの方を向く。

そして歩き出した。

「清香さん」

セナ…アイシールド21が清香を呼び止めた。


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