「…去年までの泥門なら清香が出ても勝てただろうな」
清十郎は箸を置いた。
そしてそれ以上は話さなかった。
『だよね』
きっと清十郎は泥門のあの短時間の逆転劇になにが起こったか知らない。
しかし、素人でも分かる。
残り時間9秒で逆転。
あの寄せ集め選手だけでは有り得ないことだ。
つまり清十郎は泥門の隠し玉に気づいてる。
アイシールド21のことを。
清香は思った。
「しかし、どちらにしろ女子アメフト部がない限り試合には出られない」
『それがもう一つの理由だね』
女子アメフト部がないと庄司からあらかじめ聞いていた清香はテーブルに顔を伏せた。
『大体アメリカでも私試合に出たことなかったんだよね』
それは性別上の問題ではなかった。
『体格なんだよね…』
清香は日本人女子の中では背の高い方の部類に入る。
清十郎と並んだらもちろん低いものの、今まで学年で清香より高い女子は一人いたかどうか。
適度に筋肉こそついているものの、やはり体格は日本人のそれであって、アメリカの学校では標準かそれ以下。
「日本人であり女である清香にはアメリカで活躍することは不可能に近い」
清香は清十郎をチラっと見た。
『そだね。だから私はメンタルコーチが主だったよ』
メンタルコーチングを主とし、選手に違った視点でのプレーのヒントを与える。
試合での視野を広くするために選手の行動にいつも気を配る。
全て、清香がアメフトをするキッカケとなったある人物が指導してくれたものである。
「では王城でメンタルコーチをするのか。清香らしいな」
先ほどから黙っていた母さんが口を開いた。
「そうなのね。清香が後悔してないなら私は反対しないわ」
その一言を聞き、清香の目尻が少し緩む。
清十郎はそれを見逃さなかった。
『そういえば、今日は清十郎の部屋で寝ることになっちゃったから』
「………………は?」
清十郎は、無表情のまま言い放った清香を微妙な目で見つめた。
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