日米交流寿司パーティーが始まり、しばらく寿司を食べていた清香は、ふと携帯をみる。
『あっ、もうこんな時間なんだ』
モン太はそれに気づく。
「清香さんもう帰っちゃうんスか?」
清香は苦笑いで頷いた。
『パンサーくんのヘアバンドを探すのが目的だったし、もう達成されちゃったからね。アメリカ組のホテルは近いけど、私の家は遠いから』
セナとモン太のコップにビンから液体が注がれるのを見ながら清香は言った。
それじゃあと一言言うと、清香はホーマーの方へ近づいた。
『ホーマー、私もう帰るね。道分かるよね?』
清香はホーマーを見て驚いた。
顔が真っ赤になっていたのだ。
「あー、何らもう帰るのかキヨカ。もっろいろよー!」
目がトロンとなっていて焦点があっていない。
清香はホーマーの手にあったコップを引ったくると顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
『ホーマー…これお酒なんだけど』
ホーマーは清香の腕をガシッと掴む。
QBであるホーマーの握力で掴まれた清香は顔をゆがめる。
『ほ、ホーマー』
「キヨカ、お前も飲め!!」
『えっ、いや遠慮…』
ビール缶を口に当てられる。
選手の力に抵抗できるはずもなく…。
『もうらめえ…ねるーーー!!!』
「やべえ、結構キヨカ酒弱いんじゃねぇか!?」
ホーマーは心配そうに清香の顔をのぞき込む。
ワットは清香の携帯をいじって、自宅の電話番号を出そうとしていた。
「パンサーとセナは外に走り込むとか言って出ていっちゃったし、モンタも酔っちゃってる。僕が言うしかないね!」
「その割にすげえ嬉しそうだぞ…?」
ワットは番号を見つけ出すと、かけはじめた。
2回目のコール音の後、女性の声が聞こえる。
「もしもし、ボクのなまえはワットです!」
“えっと…ワットさん?清香のお友達かしら”
「イエス!キヨカが酔ってしまって困ってるでござる。助太刀して欲しく候」
“助太刀?良く分からないんだけど…”
「おい、ワット!困ってるじゃねーか!!ちゃんと日本語あってるのか!?」
ホーマーは真っ赤になって抱きついてくる清香をなだめながらワットに怒鳴る。
「キヨカ、アルコール、ヘルプ、モウレンシュウ、テラ!!」
ワットはやけくそに日本語ではなく、カタカナを羅列した。
電話越しの女性、つまり清香の母親は気づいたようだった。
“わかったわ。清香が酔っ払って大変だから助けに来てってことね”
ほんわかとした口調の母親。
微塵も慌てた様子はない。
“場所はモウレンシュウ…孟蓮宗ね。栗田さんのとこのお寺かしら”
ワットとホーマーは顔を見合わせて笑う。
「よかった!通じたようだな!」
「僕は日本語をまだ勉強した方が良さそうだね…」
“大丈夫よ。清香の弟があと10分くらいで行くと思うわ。えっと…Her little brother will be there in 10 minutes.”
そういって切れる電話。
ワットとホーマーは再度顔を見合わせた。
「「最初から英語を話せばよかった」」
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