NASAエイリアンズが泊まるホテルに到着した。
ロビーではサラが待っていてくれた。
しかし皆の様子を見て、おかしいと思ったのか、部屋に入った後清香にこっそりと尋ねる。
「なにか、あったの?」
清香は一部始終を説明した。
それを聞き終わるとサラはため息をついた。
「あの監督、殴り飛ばしてやろうかしら!!」
清香はそれを止める。
『パンサーくんの気持ちを汲めば、私たちが殴ったらダメな気がして』
サラは立っていたが、腰を下ろす。
「そうね…。それにしてもあなた、色んなことに巻き込まれるわよね。そういう運命なのかしら」
『そうかもね』
清香は笑う。
思い出したようにベッドから立ち上がるサラ。
「忘れてたわ。あなたに言わなきゃならないことがあるの!」
清香は首を傾げる。
はい、と紙を手渡すサラ。
そこにかかれていたのは綺麗な筆跡の、見覚えのあるメールアドレスと電話番号。
「これ、あなたによ」
『これって…』
サラは笑う。
「あら、あんなに毎日のように連絡していた相手のメールアドレスを忘れちゃったのかしら」
清香は目を見開く。
まさか。
『サラ!私、もう彼には会えない!あんなに口論しちゃったし…』
「そうかしら?これを私に託すということは、向こうはそうは思ってないみたいだけど?」
清香はもう一度その筆跡を見つめた。
『…クリフォード』
清香は呟く。
「すぐに電話してあげて。彼、待ってると思うわ」
『だって、私』
清香が反論しようとするとサラは清香の言葉を遮る。
「もうあれから何年経ったと思っているの?ほら、さっさと押す!」
サラは清香の携帯を奪い取ると、勝手にその電話番号を押す。
清香は慌てる。
『や、やめてって!』
「直接会って話すのとどっちがいい?」
『すみません電話です』
サラの一言で清香はうなだれる。
サラがスピーカーをオンにすると、コール音がサラの部屋に響く。
その三回目のコール音の途中に、懐かしい声が響いた。
”この番号はお前だよな、キヨカ”
清香は息を飲む。
そんな清香を見て、先にサラが話す。
「ハイ、クリフォード様。キヨカはここにいるんだけど、あのときのことに負い目を感じてるみたい」
サラがそういうと電話の向こうのクリフォードは笑う。
”あのときのことは気にしてねーよ。俺も悪かったしな”
『でも、私』
”お前に会いたい”
清香の言葉はクリフォードによって再度遮られる。
”電話じゃ伝えられねーことがあるんだよ。お前、アメリカに来てくれねーか”
クリフォードは強い口調で言う。
”いや、そんな言い方じゃ駄目だな。来い、命令だ”
清香は黙り込む。
「クリフォード様、それは言い過ぎじゃないかしら」
サラは清香の様子を見てフォローをいれる。
”言い過ぎじゃねーよ。あのときは俺がお前を守りきれなかった。今はそんなことあり得ねぇからな”
クリフォードは言い切る。
清香はそんな言葉を聞いて笑っていた。
『クリフォードらしいね』
「私ね、あなたを夏休みにテキサスに連れて行こうと思うの」
急に言われた言葉に驚く清香。
『そんなの初耳なんだけど!?』
「あなたとゆっくり話したいし、一週間以上かけて西海岸へ向かうわ」
””そりゃあいい。俺はラスベガスにいることにする。近くに寄るのなら会おうぜ ”
そういって一方的に電話を切るクリフォード。
『サラ、私がアメリカに行くってのはいつ決めたの?』
「今よ」
『ですよねー』
清香はため息をついた。
王城の合宿もあるっていうのに。
『分かった。監督に相談してみる』
「実はね、兄さんがプロに挑戦するのよ。トライアウトを受ける予定だから、一緒に見に行きたくて」
清香は目を輝かせる。
『え、本当に!?なら絶対に行く!!』
サラは子供のようにはしゃぐ清香を見て、くすりと笑う。
「あなた、アメフト馬鹿なのは変わらないのね」
清香な一瞬きょとんとするが、すぐに口元を緩ませた。
『馬鹿は余計だって!』
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