5th down

試合が始まる。

NASA高の戦術は以前ノートルダムで戦ったときのものとほぼ同じ。

完全にパス重視である。

NASA中のときよりもラインの力が強くなっている分たちが悪い。


清香は自分が持っている泥門のデータと今見ているNASA高のデータを照らし合わせる。


パス成功率は同程度。

しかし一回のパス獲得ヤードは圧倒的にNASA高が上回っている。

泥門にはパスだけでなくセナ…アイシールド21のランもある。

しかしNASA高はラインが強い。
ランはすぐに止められてしまう。

パスで少しずつヤードを稼ぐのもいつかは限界がくる。

『ホーマーのシャトルパスを止められないと勝機はないかもね』

そのために蛭魔はブリッツの練習を清香にほのめかしたのだ。

その用意周到さには舌を巻く。


あっという間にパスが通りタッチダウン。

その後もNASAペースで試合は進行してゆく。

得点は38点差。

「キヨカ!向こうにニンジャがいたらしいよ!」

パンサーが、アポロが席を立った隙を見計らって清香に話しかける。

驚いてそちらの方を向くと、スーツ姿の二人が走って去って行くのが見えた。


『あの体格と走り方……セナ?』

知り合いなのかい?と問い詰めるワットをごまかして、戻ってきたアポロの横に座り直す。

セナたち泥門がここに偵察に来ていたことが分かったら、アポロが文句を言うに違いない。

そう考えてのことだった。


アポロは試合が一段落つくと、清香と逆側に立っていた編集長と熊袋に向けて何かを話す。

一応通訳として同行している名目がある清香は編集長の近くに寄った。

「おい黄色猿…じゃないMr.編集長。三日後の本番はナイターって聞いたが?」

『えっと、三日後の本番はナイターなんですか?』

編集長は額に青筋を浮かべながら引きつった笑顔をみせる。

「ええ、そう〜でございます!」

『はい、そうですよ』

「お前らのせいで予算オーバーでな、テレビ局に金だして貰ったんだ。テレビ中継用にわざわざナイターにしたんだよ、この腐れメリケン!」

清香は訳そうとしたが、その言葉を聞き編集長を微妙な表情で見る。

『…訳します?』

「向こうにバレないよう簡単に訳してくれる…?」

熊袋が気を使って小声でアドバイスをくれる。

清香は困ったように頷いた。

『えと…アメリカのレベルを日本の皆に伝えるために、テレビ局と協力し合ってテレビ中継するためにナイターにしたとか』

ナイス清香ちゃん!と小声で熊袋がほめる。

「それはデビルバッツをぶちのめすのにふさわしい舞台だ」

アポロは清香の通訳を信じ、葉巻の煙を吐いた。

「ナイター…NFL(アメリカのプロアメフトリーグのこと)以来か」

アポロは両手を広げて続けた。

「我々のロングパスは誰にも止められない!星空を翔けるスペースシャトルをお見せしよう!!」





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