ホーマーの紹介でNASA中のほぼ全ての選手と挨拶をする清香。
どうやらホーマーは見知らぬ人とでもすぐに仲良くなれるらしい。
「キヨカっていうんだね、よろしく」
そういって握手を求めてきたのはジェレミー・ワット。
NASA中のレシーバーである。
少し離れたところにいる黒人の青年にも話しかけようと思ったが、背広姿の男性がずっと監視するようにこちらを見ていたので無理だった。
「監督の名はレオナルド・アポロ」
ホーマーが清香の心配事に気づき、情報をくれる。
その名前を聞いただけで清香はとあることを思い出した。
『…アルマジロズの』
ホーマーは驚いて清香を見つめる。
「知ってるのか」
「もちろん覚えてる。モーガンが入ってくるまで、レギュラーメンバーとして活躍してた選手だよね」
ホーマーはしーっと目の前に指を差し出す。
清香がアポロの方を見るとかなり目つき鋭くこちらを睨んでいた。
『もしかして…禁句だった?』
「そこは察してくれ」
清香は頷く。
ホーマーは清香の頭をがしがしと撫でるとワットたちの方へ歩いていった。
アポロが違う方向を向くのを見計らって、先ほど見かけた黒人の青年が話しかけてくる。
「俺っパトリック・スペンサーっていうんだ!よろしくな!」
清香は急に視界に現れた青年、パトリック・スペンサーに驚く。
しかしすぐに握手を返した。
『よろしく!私はキヨカっていうんだ。えっと…パトリック?』
「俺はパンサーって呼ばれてんだ。パンサーって呼んでくれよ」
笑顔のパトリック・スペンサー、もといパンサー。
『パンサーくんだね!』
「キヨカってニホンから来たんだろ?ニホンはアメフト盛んなのか?」
パンサーはフジヤマーと笑いながら頭の上にジェスチャーで山を作る。
清香は考え込む。
『盛ん…っていうか、アメリカとは比べものにはならないけど、一応アメフト部はあるよ』
「強い選手はいるのか?」
わくわくを隠せないといった表情で清香に詰め寄るパンサー。
清香は咄嗟にとある選手の名前を口に出していた。
『ノートルダムのアイシールド21以外なら…し、進清十郎!』
「シン…セイジュウロウ?」
清香ははっと口を噤むが時すでに遅し。
開き直った清香は頷いた。
『そう!セイジュウロウ・シンだよ。日本の中学アメフトで有名なんだ!』
多分、と心の中で付け加える。
「そっか、セイジュウロウ…!ニホンへ行ったら戦ってみたいな!」
清香は苦笑いをした。
雑誌に載っているということは凄いということなのだろうが、一番強いのかと言われれば分からない。
パンサーには誤解を生じさせることになるが、きっとすぐに忘れるだろう。
清香な楽観的に考える。
遠くでホーマーの声が響く。
どうやらパンサーを呼んでいるようだ。
パンサーは慌ててそっちへ向かう。
「ありがとなキヨカ!それじゃ!」
パンサーが走る。
清香は目を見開いた。
『何この走り…』
見たことがなかった。
黒人のバネを生かした鋭い走り。
今までに見てきたランナーが霞んで見えるほど。
『こんな走り、できっこない』
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