30th down
フェニックス中との試合から数日たったある日、清香は大和と共にコーチに呼び出されていた。


コーチによると、日本から記者が来ていて取材がしたいということだった。

大和は快く了承したが、清香は少し眉を寄せる。

「日本からの取材だろ?どうして嫌がるんだ」

『取材なら大和だけでいいと思って』

大和は清香の背中をばしっと叩く。

清香は全くよろけることなく大和を見た。

「記者に認められたということだろう?ここは喜ぶべきところだよ」

清香は少し笑う。

『それは、そうだね!』



コーチにその旨を伝えると、待ち合わせ用の会議室に通された。

大和はアイシールド21として取材を受けるらしい。

清香もフルネームではなく、名前だけを表記してもらえるようにした。

眼鏡をかけた中年の記者が入ってきて、清香と大和の前に座る。

「いきなりすみません!アポがとれなくて…。今日はよろしくお願いします」

清香はぺこりと軽くお辞儀をする。

大和は記者と握手を交わした。

「私は日本で月刊アメフトの記者をやっているんです。数日前のフェニックス中との試合を偶然アメリカの知人から聞きまして、取材をさせていただきたく思ったんですよ」

日本にいた頃はアメフトに興味がなかったため、そんな雑誌があることに気づかなかった清香。

大和は知っているようだった。


「えっと、記事に書く際は、アイシールド21と清香…でいいんでしょうか?」

清香ははい、と頷く。

大和も本名は避けてくださいと付け加えた。

「それでは早速!」

ICレコーダーを取りだし、録音し始める記者。

取材が始まった。


まずは大和の取材。

アメフトを始めた理由や、ノートルダム大付属でエースを張る重圧など、様々なことを聞かれていた。

清香は黙ってその話を聞く。


30分ほど経っただろうか。

記者が椅子に深く座り直し、清香の方を向いた。

どうやら清香の取材が始まるようだ。

「清香さんは41番を貰っているらしいですね。その意味はなんですか?」

清香は固まる。

ジョンがくれたこの背番号に意味はないと思っていた。

『すいません、理由は分かりません』

そうですか、と残念そうな記者。

「清香さんの本名は進清香というらしいですね。弟さんか親戚の人はアメフトをしてらっしゃいませんか?」

清香は思い出す。

もう一年以上家とは連絡をしていない。

弟である清十郎はあまり人と関わり合う性格じゃないから、部活には入らないだろう。

…勧められない限り。

入ったとしても陸上だろう。

『いえ、弟はいますが、アメフトをしていません』

多分、と心の中で付け加える。

「そうなんですか。今中学アメフトであなたと同じ姓で有名な選手がいるものですから、つい」

清香は苦笑いをする。

これが清十郎だったら面白いんだけど。


記者の質問は続く。

メンタルトレーナー兼選手としてどうチームと関わり合っているのか、など。

結局二人の取材で約一時間。

記者はレコーダーのスイッチを切ると、最後に二人の並んでいる写真を撮り、連絡先を教えてから取材を終えた。



『大和、取材のときまでアイシールドつけてたね』

ずっと隣にいた大和はユニフォームの下にプロテクターもつけ、ヘルメットを被るという重装備。

逆に清香はジャージだった。

「アイシールド21として日本に知って貰いたいからね。清香もユニフォームを着れば良かったのに」

『いや、私はいいや』

清香は記者から貰った連絡先を携帯に登録する。

二人は共に練習へと戻った。




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