下に降りると、ちょうど清十郎が玄関を開ける所だった。
『おかえりー。ご飯出来てるけど、先にシャワーだよね』
「…あ、ああ。ただいま。うむ、そうしよう」
間髪いれずに話しかけてきた清香に驚きながらも生真面目に返す清十郎。
階段ですれ違い様に清十郎を見ると、ほんの少し笑っているように見えた。
リビングに入り、テレビをつける。
母さんは好きなアイドルが出るからといって清香からチャンネルをひったくる。
その歌番組に出てくる歌が全て聞いたことがないものだと知ったとき、清香は苦笑いをした。
『流行のりの字にも乗れてないし』
清十郎がシャワーを浴び始め10分がたつので、そろそろ皿を準備し出す清香。
母さんは相変わらずアイドルに釘付けである。
小皿にジャガイモをひとかけらとり、味見をする清香。
『おいしっ』
母さんの料理は上手いので、当たり前なのだが……。
炊飯器のご飯を茶碗に盛り、肉じゃがを皿に入れ、テーブルに並べる。
先ほど母さんが作っていたお吸い物を準備し、リビングが夕食の匂いに包まれる。
「それにしても、三人でなんて久しぶりよね。何年ぶりかしら。」
アイドルの出番が終わり、テレビを消す母さん。
清香の顔を優しく見つめながら言った。
ガラッという音が洗面所から聞こえてきた。
清十郎が出たのだろう。
清香はテーブルの定位置、つまり母さんの正面に腰を下ろした。
リビングに、タオルを肩にかけた清十郎が入ってくる。
『あ、清十郎。ほらほらご飯!』
待ちきれないといった表情で清十郎を呼ぶ清香と微笑ましく見守る母さん。
清十郎はうむ…と頷きながら清香の右隣に腰を下ろした。
「それじゃ、いただきます」
『いっただきます!』
「…いただきます」
三人の声が食卓に響いた。
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