『フェニックスって…アリゾナ州だったよね』
ことの始まりはサラがニュースを持ってきたことから始まった。
「今度の遠征試合はフェニックス中らしいわ!!」
いったいどこから情報を仕入れてきたのか。
清香は不思議そうにサラを見つめる。
「フェニックス中って、この前試合したところか?」
部屋に遊びに来ていた大和はサラに尋ねる。
そうよ!とサラは答えた。
数ヶ月前、まだ清香がメンタルサポートとしてベンチに入っていた時に一度フェニックスへ遠征したのだ。
もちろんノートルダム付属の圧勝で終わった。
そういえば…と清香は思い出す。
『前に私達がそのチームと練習試合したときより強くなってるらしいよ』
「よく知ってるな」
「キヨカは情報収集が趣味なんだから当たり前よ」
『その言い方語弊が生じるからやめて!』
まるで私が情報しか興味がないみたいだ、と少しむすっとする清香。
冗談よ、とサラ。
『選手がどうなってるかまでは分からないけどね。総合力で見たらアリゾナ州一番じゃないかな』
「そうか、楽しみだな」
大和は手にしていたミネラルウォーターをぎゅっと握りしめた。
『今回も私はベンチサポートに徹するからね!』
清香は大和に笑いかける。
選手になったとしても試合に出られないことはもちろん分かっている。
「清香…」
少し悲しそうな顔をする大和。
清香はその背中をばしっと叩く。
『いいんだって!』
サラはそんな二人の様子をにこやかな笑みを浮かべて見守っていた。
さあ!とサラが声を出したことで二人はサラの方を向いた。
「イケメン探さなきゃね!」
『また!?』
「何言ってるの、あなたのためよ」
サラの一言に飲んでいた水をふき出す大和。
そして固まる清香。
『そっちこそ何言ってるの!?私はイケメンに興味ないの!アメフトが好きならそれでいい!!』
「あんた…生粋のアメフトバカね」
『ありがとう』
「誉めてないわよ」
大和がやっと我に返り、口元を拭う。
「アメフトが好きな人が好きなのか?」
『うん!』
サラはふふっと声に出して笑う。
「第一関門クリアかしら?」
「さ、サラ!!」
大和が慌ててサラの口を押さえる。
清香は不思議そうに二人を見た。
『関門って?』
「なんでもないよ!」
大和はひきつった笑いを返す。
サラは耐えきれずに笑い出した。
そんな二人の考えていることなど分からずに清香は首を捻るのだった。
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