セナが目を見開いてパンサーの走りを見ているのを後ろから眺める清香。
「テメェはパンサーに出てほしいと言っていたな」
蛭魔の質問に無言で頷く清香。
「…パンサーの走りを見たいが、見たくないんだろ」
蛭魔の言葉にびくりと肩を揺らす清香。
「分かりやすいんだよ」
『それ、本当のアイシールド21にも以前言われた』
ハッと鼻を鳴らす蛭魔。
「テメェがパンサーの走りを見ているとき、表情が暗すぎんだよ」
『…笑ってたつもりなんだけど』
「走りを見ながらニヤニヤするのも気色悪いんだよ」
『それはそうだね』
困ったように笑う清香。
それを見て蛭魔は静かに言った。
「何があったか知らねーが、エイリアンズの情報をくれたのは感謝してる」
清香は驚いて蛭魔を見た。
『妖一が感謝した!』
再度銃床で殴られ涙目になる清香。
「無理矢理聞き出したことは不可抗力だからな」
『別に…いいよ。私も今回のことで割り切ったし』
蛭魔は黙って壁に背中を預ける。
その目はスクリーンに映るパンサーを見ているセナたち四人に注がれていた。
清香はふと思い出したように言う。
『セナの弱点だけど』
ぴくりと眉を動かす蛭魔。
『折角だから一対一でセナに教えようか?』
泥門戦からずっとアイシールド21のことを考えていた清香。
なんどもビデオを見て、先日清十郎と共に弱点を見つけたのだ。
「…テメェとやるのか」
『私、これでもノートルダム大付属の41番元ラインバッカーなんだけど?』
蛭魔はケケケと笑う。
「試合に出てねーくせに!」
ま、経験はよっぽどセナより上か、と蛭魔はため息をつく。
「いつ、するんだ?」
『その気になればいつでも』
清香は笑う。
蛭魔も同じように笑う。
「テメェが気づいたってことは、進も気づいてんだろ」
『一緒に考えたからね』
蛭魔は一瞬真顔になる。
「夏休みが鍵…だな」
『弱点克服しなきゃ私達には一生かなわないよ』
「言ってくれるじゃねーか!」
動画が終わり、清香は泥門の皆に帰ることを伝えた。
「清香さん!ありがとうございました!」
「あざっした!!」
「またね、清香ちゃん!」
セナ、モン太そしてまもりが清香に一声かける。
清香はそれぞれに手を振った。
部室を出ていこうとしたそのときだった。
「清香、また来い」
去り際にかけられた声。
初対面以来初めて呼ばれた名前。
清香は振り返ると満面の笑みで頷いた。
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