東京駅に着き、周りを見渡す。
清十郎には明日帰るって言ってしまっているから、一人で帰らなければならない。
東京駅には何度も来たことがあるのでさすがに迷うことはないが、今帰っても清十郎はまだ部活中だろう。
清香はしばらく悩んだ後、思い出したように携帯を取り出す。
『あ、大和からメール来てる』
メールは後で確認するとして。
清香は本来の目的であるとある電話番号をコールする。
しばらくコール音が鳴り響き、持ち主が出る。
「糞原始人じゃねーか」
『…やめてって』
案の定原始人と言われ、清香はため息をつく。
電話をかけた相手は蛭魔。
泥門を偵察に行こうと思ったのだった。
『今練習してる?』
「今ランニング中」
『…なんで息乱れてないわけ?』
ケケケと電話越しに笑う蛭魔。
電話の奥でまもりの声が聞こえるのでランニング中かはともかく、部活中なのは確かのようだ。
『今からそっち向かうね。練習見ようかなと思って』
「また突然だな。さすがスケジュールを立てない無計画原始人」
『私は妖一のなかでずっと原始人なわけ?』
清香はため息をついた。
ふと思い出したように続ける。
『アイシールド21に会ったよ』
「セナか」
『本物の方ね。分かってるんでしょ?その正体も、どの学校にいるのかも』
電話の向こうの悪魔は黙っている。
「自分の足で情報を集めるなんて古典的だな」
しばらく黙った後に、軽く笑いながら蛭魔が言った。
『さすが、原始人って言いたいの?』
「いや、糞真面目な奴だと思った」
『最初の一文字が余計だね』
清香は笑った。
蛭魔はケケケと不敵に笑った。
仕方ねえなと電話越しに聞こえる声。
「ランニングはまだかかるが、学校にはアイシールド21と糞サルがいるはずだ」
そいつらとでも話してろ、と蛭魔は一方的に電話を切った。
ほら、なんだかんだ言って優しいんだから。
清香は荷物を抱えると泥門の方へ歩き出した。
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