10th down

清香は大和のユニフォームを見る。

そこに書いてある数字は22。

清香は少し苦い顔をした。

『これ…大和』

大和は少し眉尻を下げて笑った。

「日本のアメフト界を制覇するまで、封印しようと思って」

『そっか』

それでも腑に落ちない顔をしている清香。

大和は背中をばんと叩き、微笑んだ。

「ほら、清香らしくないよ」

背中を叩かれ、よろける清香。

大和は咄嗟にその身体を支えた。

「あれ、体力落ちた?」

清香は苦笑いをして大和を少し睨んだ。

『こっちではもうアメフトの基礎トレやってないし、成長期の男子からそんな風に叩かれれば倒れるのは当たり前!』

大和は声を出して笑う。
清香もつられて笑った。


「それにしても、よくここが分かったな」

『いや、本当にいるとは思わなくて』

清香は帝黒へ来た理由を簡単に大和に説明する。
スカウトされたことも含め。

それを話すや否や、大和の顔はどんどん明るくなってゆく。

「それじゃあ帝黒に入学するのか!」

『そ、それは…違うけど』

明らかに落胆する大和。

まあスカウトされて、わざわざやってくるなんて入学する気があるとしか思えないだろう。

「今のチームが好きなんだな」

少し寂しそうに言う大和。
清香は大きく頷いた。

「そうか…残念だな」

『これからは敵だね』

「それはそれで、面白いな」

勝負師の眼になる大和。


清香の脳内には対峙する二人の男の姿が浮かんでいた。

一人は目の前にいる男、大和猛。
一人は血を分けた弟、進清十郎。

この二人が戦えばどうなるのだろうか。


見てみたいような、見たくないような。


清香がぼーっとしているのに気づき、大和は清香の顔の前で手を振る。

はっとする清香。

『ごめん……考えごとしてた』

少し間をおく清香。

その様子を見て大和の表情が曇る。

「そういえば、清香って好きな男…出来たのか?」

大和は清香のぼんやりとした様子を好きな男のためと思ったのか、真剣な表情で清香に尋ねる。

清香はそんなことを聞かれるとは思っておらず、きょとんとして答えた。

『え、いないけど』

即答。
アイシールド21も真っ青の速さである。

大和は少し表情を和らげた。

「そうか、ならばまだチャンスはあるってことだね」

『チャンス?うん、まだ私17歳だしね!これからだよ』

「そういうわけじゃないんだけど」

大和は困ったように笑う。

清香は大和の様子に少し首を傾げた。




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