自分が必要。
嬉しかった。
清香は先ほど言われた言葉を思い出し、にやにやと笑っていた。
チアの会議から帰ってきたサラからも指摘される始末。
「なにかあったの?」
『うん!ちょっとねー!』
にこにこ笑っている清香を見てサラもつられて笑った。
「あなたは笑っている顔が一番素敵よ」
『ありがとう』
清香はベッドにダイブしてこれからのことを考え始めた。
まだにやついてはいるが、思考に支障はないだろう。
今までコートの外からプレーを見ていたが、それだけでは詳しいアドバイスを皆に与えることはできない。
これ以上の質にするためには中から見ることが不可欠だ。
選手として基礎トレに参加してみようかな…。
清香はそう考えた。
もちろん試合に出てみたいが、出られないことくらい分かっている。
女子のチームに入りたいが、近場には存在しなかった。
そもそも選手でない自分から変にアドバイスを受けて、嫌に思う選手もいるだろう。
真の意味で選手視点から物事を観察するのだ。
『サラ、私が選手になったらどう思う?』
「え?」
清香はサラに尋ねた。
雑誌を読んでいたサラは雑誌を閉じると私の元へ近付いてきた。
「悪くないと思うわ」
しかしサラの顔は浮かない。
清香は首を傾げた。
「…あのね、実はあなたに話してないことがあるの」
急な話題転換に真剣な表情になる清香。
「最近あなたをよく思っていない子が多いの」
この学校にも他の場所でもね、と付け加える。
『え?』
「共通点はね、なんとなく分かっているんだけど」
清香は黙った。
「おそらくクリフォード様のファンの子達ね」
そして目を見開く。
まさか、クリフォードと親しくしていることがこういう結果を招くとは。
だからクリフォードはあんなに牽制のような発言を皆の前でしていたのだろう。
手を出したら、というのは冗談ではなかったのだ。
「だからあなたが選手になるのは賛成よ。クリフォード様に近づく理由が本当にアメフトが好きなだけだから、ってことが分かってもらえるかもしれない」
『う、うん』
「クリフォード様と連絡とりあうのは…しばらく控えた方がいいわ」
清香はゆっくりと頷いた。
アメフトに誘ってくれた人物、クリフォード。
クリフォードと連絡が取り合えなくなるのは、辛いことだった。
しかし、このままではアメフトを続けるどころか、この学校にすらいられなくなるかもしれない。
下手をすればクリフォードにも迷惑がかかる。
自分のせいでクリフォードのアメフトへの情熱に水を差すのは避けたい。
清香は携帯を取り出し、アドレス帳のCの部分を開く。
Cの項目の一番上にある名前、つまりCliffordと言う文字を見つめる。
そして清香は唇を噛みしめながら、削除の項目を選んだ。
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