23rd down

自分が必要。

嬉しかった。

清香は先ほど言われた言葉を思い出し、にやにやと笑っていた。


チアの会議から帰ってきたサラからも指摘される始末。


「なにかあったの?」

『うん!ちょっとねー!』


にこにこ笑っている清香を見てサラもつられて笑った。

「あなたは笑っている顔が一番素敵よ」

『ありがとう』


清香はベッドにダイブしてこれからのことを考え始めた。

まだにやついてはいるが、思考に支障はないだろう。


今までコートの外からプレーを見ていたが、それだけでは詳しいアドバイスを皆に与えることはできない。

これ以上の質にするためには中から見ることが不可欠だ。


選手として基礎トレに参加してみようかな…。


清香はそう考えた。

もちろん試合に出てみたいが、出られないことくらい分かっている。
女子のチームに入りたいが、近場には存在しなかった。

そもそも選手でない自分から変にアドバイスを受けて、嫌に思う選手もいるだろう。

真の意味で選手視点から物事を観察するのだ。


『サラ、私が選手になったらどう思う?』

「え?」

清香はサラに尋ねた。

雑誌を読んでいたサラは雑誌を閉じると私の元へ近付いてきた。

「悪くないと思うわ」

しかしサラの顔は浮かない。

清香は首を傾げた。

「…あのね、実はあなたに話してないことがあるの」

急な話題転換に真剣な表情になる清香。

「最近あなたをよく思っていない子が多いの」

この学校にも他の場所でもね、と付け加える。

『え?』

「共通点はね、なんとなく分かっているんだけど」

清香は黙った。

「おそらくクリフォード様のファンの子達ね」

そして目を見開く。
まさか、クリフォードと親しくしていることがこういう結果を招くとは。

だからクリフォードはあんなに牽制のような発言を皆の前でしていたのだろう。

手を出したら、というのは冗談ではなかったのだ。

「だからあなたが選手になるのは賛成よ。クリフォード様に近づく理由が本当にアメフトが好きなだけだから、ってことが分かってもらえるかもしれない」

『う、うん』

「クリフォード様と連絡とりあうのは…しばらく控えた方がいいわ」

清香はゆっくりと頷いた。

アメフトに誘ってくれた人物、クリフォード。

クリフォードと連絡が取り合えなくなるのは、辛いことだった。

しかし、このままではアメフトを続けるどころか、この学校にすらいられなくなるかもしれない。

下手をすればクリフォードにも迷惑がかかる。

自分のせいでクリフォードのアメフトへの情熱に水を差すのは避けたい。


清香は携帯を取り出し、アドレス帳のCの部分を開く。

Cの項目の一番上にある名前、つまりCliffordと言う文字を見つめる。

そして清香は唇を噛みしめながら、削除の項目を選んだ。



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