22nd down

大和の部屋は清香と同じ二人部屋だ。

もう一人の家主は休暇のため帰省しているという。


清香と大和は部屋に入り、大和は清香にベッドへ腰掛けるように言った。

大和はその横の枕側へと座る。


「…清香、何か悩んでるだろ?」


清香はその言葉を言われ、びくりと肩を揺らす。

それを見て大和は少し微笑んだ。


「まあ気付かない方がおかしいよね」

『そんなにバレバレだった…かな』

「明らかに兄弟の話題をするの嫌がってたよね」


清香は目を逸らして苦笑する


「当たりでしょ?」

『そうだね』


大和は近くで清香の目を見つめる。


『な、何?』

「話してくれないかな、って」


清香は大和の脇腹を肘で小突く。

大和は爽やかな笑みを浮かべる。

そして一瞬真顔になると、正面を向いて静かに言い放った。


「ごめん、頼って貰いたかったんだけど、俺じゃ力不足だな」


清香ははっとして横を向いた。


「俺さ、寮の裏で殴られているのを見られたとき、正直ショックだった。でも清香がそんな俺を見て幻滅せずに、頼って欲しいと言ってくれた」

『…うん』


清香は大和の横顔をちらと見た。

その目には何が写っているのだろうか。


そっか…自分もあのときの大和と同じなんだ。
すべてを自分で抱え込んでる。
頼っても、いいんだ。

清香は隣にいる大和を見つめた。

『大和、聞いてくれる?』


清香は全てを話した。

大和はその間、相づちを打つこともなく、ただ黙っていた。


全てを話し終わると、清香は苦笑した。

『少し、楽になったかも』

「それはよかった」

大和はさりげなく清香の肩を抱く。

これをされるのは殴られていた大和を助けたとき以来。

「俺は、清香しか知らない。その弟のことを見たことはない。だけど、今の俺にはそんなこと関係ない」

その言葉を発した大和は恥ずかしくなったのか少し首をかく。

清香は大和を見てきょとんとしていた。


「つまり、さ」


大和は抱いていた肩を強く引き寄せた。


「今の俺には清香が必要ってこと」



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