大和の部屋は清香と同じ二人部屋だ。
もう一人の家主は休暇のため帰省しているという。
清香と大和は部屋に入り、大和は清香にベッドへ腰掛けるように言った。
大和はその横の枕側へと座る。
「…清香、何か悩んでるだろ?」
清香はその言葉を言われ、びくりと肩を揺らす。
それを見て大和は少し微笑んだ。
「まあ気付かない方がおかしいよね」
『そんなにバレバレだった…かな』
「明らかに兄弟の話題をするの嫌がってたよね」
清香は目を逸らして苦笑する
「当たりでしょ?」
『そうだね』
大和は近くで清香の目を見つめる。
『な、何?』
「話してくれないかな、って」
清香は大和の脇腹を肘で小突く。
大和は爽やかな笑みを浮かべる。
そして一瞬真顔になると、正面を向いて静かに言い放った。
「ごめん、頼って貰いたかったんだけど、俺じゃ力不足だな」
清香ははっとして横を向いた。
「俺さ、寮の裏で殴られているのを見られたとき、正直ショックだった。でも清香がそんな俺を見て幻滅せずに、頼って欲しいと言ってくれた」
『…うん』
清香は大和の横顔をちらと見た。
その目には何が写っているのだろうか。
そっか…自分もあのときの大和と同じなんだ。
すべてを自分で抱え込んでる。
頼っても、いいんだ。
清香は隣にいる大和を見つめた。
『大和、聞いてくれる?』
清香は全てを話した。
大和はその間、相づちを打つこともなく、ただ黙っていた。
全てを話し終わると、清香は苦笑した。
『少し、楽になったかも』
「それはよかった」
大和はさりげなく清香の肩を抱く。
これをされるのは殴られていた大和を助けたとき以来。
「俺は、清香しか知らない。その弟のことを見たことはない。だけど、今の俺にはそんなこと関係ない」
その言葉を発した大和は恥ずかしくなったのか少し首をかく。
清香は大和を見てきょとんとしていた。
「つまり、さ」
大和は抱いていた肩を強く引き寄せた。
「今の俺には清香が必要ってこと」
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