『はっ、寝てた』
新幹線のアナウンスで目を覚ます清香。
新大阪につく直前のアナウンスのようだ。
清十郎が言っていたことを思い出す。
「改札口までは人の波に乗ればいい。そこにスカウトマンがいるはずだろう」
『べ、別に迷うとかそんなんじゃないけどね!もしものときは駅員さんに聞けばいいし』
駅に着き、数日分の荷物しか入っていないトランクを抱えて外へ出る。
そして弟の言っていたとおり、人の向かっている方向へ向かった。
すぐに改札口が見え、清香は安堵のため息をもらす。
改札口のそばに見慣れた二人組。
一度見た人はなかなか忘れない清香は、急いでその人物達に近寄る。
スカウトマン達は嬉しそうに清香を迎えた。
帝黒を見れば清香が入りたくなるとでも思っているのか。
その表情は未来の帝黒生に対して向けられているものであることは明白だった。
「待ってましたよ進清香さん」
にこにことした営業スマイルは変わらない。
三人はすぐにこの二日間泊まる予定であるホテルへと向かった。
ロビーのソファに座るとおもむろに資料を広げ始めるスカウトマン。
「こちらが入学案内書になります!」
清香はどきりとした。
もちろん入るつもりなんて毛頭ないのだ。
『実際校舎を見てからじゃないとこういうの決めないようにしてるんですよ』
もっともらしく聞こえることを言うと、スカウトマンは残念そうにバッグへしまい始める。
清香は冷や汗を流した。
スカウトマンと明日以降の打ち合わせをした後、スカウトマンは帰って行った。
すぐにホテルマンが来て清香を指定の部屋に連れて行ってくれた。
迷い癖のある清香には正直ありがたかった。
部屋につき、かなり高級そうなベッドに身を投げ出す。
『ついに…明日か』
大和猛に会えるかもしれない。
会えないとしても情報を得られる可能性は高い。
明日は土曜日なのでそれを利用して一日中練習を見学することにした。
校舎内の案内も勧められたが、断ることは出来なかった。
清香は、よしっ!と呟くと明日のために荷物を整理し始めた。
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