週末になるにつれて清香のテンションは上がっていった。
それに反比例して清十郎の機嫌は目に見えて悪くなってきた。
そして、金曜日の放課後。
清香は一度家に帰り、用意していた荷物をもって東京駅へやってきた。
一応付き添いのように清十郎もいたが、荷物を持つだけで一言も話さない。
さすがの清香も少し清十郎の怒りように驚いていた。
帝黒学園を騙すことに抵抗があるのか。
それを利用することに悪意があるのか。
どちらにしろ清香はこの計画をやめる気はなかった。
新大阪駅でスカウトマンが待っているはずなので、迷うこともない。
清香が乗るはずの新幹線がホームへ入ってくる。
清香は清十郎から荷物を受け取ると軽く手を振る。
清十郎は少し眉を寄せたが、やがて諦めたように少し頷いた。
『いってきます』
「日曜の夜駅へ迎えに向かう」
そう呟くと清十郎は新幹線が発車するのも待たず、踵を返し階段を下りていった。
その後ろ姿を見つめる清香。
なんだかんだ言って清十郎は優しい。
ありがとう、と呟くと清香は自分の切符に書いてある指定席へと向かった。
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