部室に戻ってすぐ、清香はビデオの編集を始めた。
皆は筋肉痛を防ぐためにアイシングをしている。
このあいだに急いで編集しないと。
阿含は出ていないものの、完全に神龍寺のペース。
この試合で分かったことは、やはり攻撃力不足。
その実感が増しただけだった。
そして守備の要が清十郎と大田原であること。
どちらかが止められただけで鉄壁と呼ばれる王城の要塞はすぐに崩れる。
今回は山伏と大田原のマッチアップにより、大田原が止められてしまった。
そのために、攻撃も守備もいい流れは掴めなかったのだ。
ビデオを編集し終わり、監督に許可をとって複製を作る。
家でじっくり確認するためだ。
もちろん第三クォーターから来たために序盤の展開が分からなかったこともある。
監督にビデオを渡すと、すぐに反省会が始まった。
一部の選手達はアイシングをしたままだ。
清香は反省会を見る気満々だったが、小春から呼び止められる。
「清香さん!洗濯しましょう!」
清香は思い出したように苦笑いをする。
そうだった。
マネージャーはとても大変なのだ。
清香は小春が抱えている洗濯かごの中身を半分を受け取ると、名残惜しいように反省会を見ながら、外へ向かった。
洗濯機にドロをいれてはいけないので、まずは全てのユニフォームの土を落とす。
特に汚れているものは念入りに洗う。
『小春、手荒れない?』
「私は慣れてますから!」
心配して小春に尋ねるが、杞憂に終わる。
「私、ここの近くの商店街の八百屋の娘なんです。学校が終わってから手伝わされるのが嫌で部活に入ったんですけど…」
『あんまり変わらないわけだ』
はいと苦笑する小春。
「でも分かったんです。私、こういう仕事が大好きだって」
ユニフォームの土を丁寧に落としてゆく小春の手つきを見て、清香は納得する。
『小春は将来いいお嫁さんになれるね』
小春は顔を真っ赤にして反論する。
「なな何言ってるんですか!飛躍しすぎですよ!」
『そうかな?小春を好きな人、多いと思うよ?』
「でも告白されたこと…」
尻すぼみになる小春の言葉。
清香は妹が出来たような心境になる。
『それは小春が気づいてないだけだって!それっぽい雰囲気出してる男子いないの?』
「えー…分からないですよっ!」
ガールズトークは洗濯物を干し終わった後も続いた。
最終的な結論は…
『小春って絶対気づいてないだけだよね!』
「清香さんこそ、そうなんじゃないですか!?」
二人が似ているという結果にたどり着いただけだった。
__to be continued
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