一休は少し話しづらそうに言った。
「無理にとは言わないけどさ、今から時間とれる?」
清香はちらりと王城側を見た。
何故か泥門メンバーが勢ぞろいしているが、それは気にしないことにする。
後で怒られるかなと少し逡巡するが、清香は思い切って頷いた。
なかなかやってこない一休に痺れを切らした山伏がフィールドに顔を覗かせる。
しかし清香と一休が揃っているのを見るや否や「おぅすまん」と慌てて去っていった。
別に逢瀬とかじゃないんだけどな。
清香は一休とフィールドを出た。
少し離れた、そばに自動販売機があるベンチに腰を下ろす。
「俺さ」
一休は自動販売機から買ってきたコーラを清香に手渡すとおもむろに話し始めた。
「なんていうか、ちょっと混乱してて…大人げなかったなと思って」
『言ってなかった私も悪いんだし』
「はっきり言うとさ、行ってほしくなかったってのが本音」
清香は頷いた。
コーラのふたを開ける
ぷしっと小気味いい音が二人の間に響いた。
「でも、こんなこと言うの今更だけどさ。うちは男子校だったし、これがある意味自然なのかなって」
清香は一休の真面目なトーンに思わず笑った。
『本当、今更だね』
「笑うなって!俺なんて言って謝るか鬼悩んだんだからな!」
『一休、ありがとう』
清香の言葉に一休は少し驚く。
しかしすぐに昔のような朗らかな笑みを浮かべた。
「それにしても、お前進の姉だったんだな!さっきの試合ファンブルしそうになって鬼焦ったって」
『清十郎誉めてたよ?慢心をなくせば言うことないって言ってたし』
「慢心ってのはつまり自信の現れだろ?俺プライド強いからなくすのなんて難しいっての」
清香は笑った。
『だからさっきの阿含のボールをキャッチした二人を見て闘志むき出しにしてたんだよね?』
「まあな。でも桜庭ははっきり言ってまだまだ甘いし、もう一人の方もぶっちゃけそこまで強そうじゃなかった」
清香は、ほらと一休を注意した。
『それが慢心でしょ』
面倒くさそうに舌を出す一休。
それを見て清香はまた笑う。
遠くから神龍寺の先輩方がカンカンで一休を呼んでいる。
「やっべ!ミーティング今からだった」
『うん、またね』
清香の言葉を聞いて照れくさそうに笑う一休。
「阿含さんに感謝しなきゃ」
急に出てきたドレッドの名前に清香は眉を寄せた。
「阿含さんが清香のこと言ってくれたから話することが出来たからさ」
『え?どういうこと』
「清香が俺のことで悩んでるって言ってくれたんだよ」
んじゃな!と手を振りボールかごを抱えて去っていく一休を見送りながら、清香は阿含のことを考えた。
『どうでもいいとか言っときながら、ちゃんと言ってくれてるじゃん』
清香は心中阿含に感謝しながら、走ってフィールドへ戻った。
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