そういえば…
クリフォードはコップを置くと、思い出したように切り出した。
「お前、弟いるんだな」
あっと口を噤む清香。
あまり弟のことや家族のことをクリフォードに言うつもりはなかった。
『ま、まあね』
「そういや、お前の家族のこと聞いたことなかったな。お前以外は全員日本にいるのか」
清香は仕方ないというように少し肩をすくめて見せた。
『父親はここにいるよ』
「外資系企業か」
『ううん。外交官だよ』
外資系企業という言葉が13歳の口から出てくることに対して清香は笑った。
クリフォードとの話は大人びている。
この考察力ならば、おそらくあと五年もしたらカジノで大儲け出来るだろう。
「すげえじゃねえか」
『いや、外交官といっても平の方だし、主に事務仕事しかやってないらしいよ』
清香の父親はワシントンD.C.にいると聞いたクリフォード。
「ならお前はノートルダム大のミドルスクールに通わずにワシントンに行けば良かったじゃねえか」
清香は笑った。
こんなこと、サラにも話してないのにな。
『父親と知り合いの政治家が近くに住んでるらしいから、ノートルダム大のほうが安心できるんだって』
クリフォードは納得したようなしてないような微妙な顔になる。
「へえ」
『ここにいれるのも二年くらいだし、結構町だから不便じゃないしね!そりゃサンフランシスコに比べたら劣るけど…』
清香は今車が走っているフィルモアストリートを窓越しに眺めた。
「お前、ブティックに寄るか?」
近くにはセレブ御用達の高級ブティックが立ち並ぶ。
清香は首を振る。
『私はどちらかというとハリウッドに行きたかったかも』
ハリウッドはカリフォルニア州にある。
岸壁にHollywoodとかいてあるのはあまりにも有名だ。
「ハリウッドは…ダメだ」
むすっとして腕を組むクリフォード。
清香は驚いてクリフォードを見つめた。
『ハリウッド嫌いなの!?』
「…悪友がいるからな」
『クリフォードの友達!?会いたいな!』
「ダメだ!!」
ものすごい剣幕で清香を制するクリフォード。
その必死な姿に、思わず清香は笑ってしまった。
『分かった、じゃあいずれ紹介してよね?』
クリフォードはそっぽを向きながらしぶしぶと頷いた。
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