15th down
試合は13時から始まる。

クリフォードはそういうと、少し遠くの駐車場に止めていた大型の車へと清香を連れて行く。

『り、リムジン!?クリフォードってお金持ちなんだね…』

当然だと言うように鼻をふんと鳴らすクリフォード。

「王族の血筋だからな」

『嘘でしょ』

リムジンに乗り込んだ清香はクリフォードの言葉に即答する。

「ハッタリだよ。それっぼく振る舞えば皆信じるってもんだ」

『ハッタリって私に言っちゃっていいの?』

広々としたシートに我が物顔で座るクリフォード。

いや、クリフォードのものだろうから文句は言えないんだけど。

「お前は特別だ」

『日本人だしね』

「そういうわけじゃねーよ」

ため息をつくクリフォード。
それを見て清香は首を傾げた。

『じゃあクリフォードのお父さん何してるの?』

クリフォードは顔をしかめる。

もしかして地雷だったのだろうか。

『ごめん!なんでもない!』

「…いや、別に言うのが嫌な訳じゃねえんだよ」

クリフォードは目を背けると近くに置いてあった飲み物をコップに注ぎ、それを煽った。

その飲み物は何なんだろう。

そう思いながら清香はクリフォードの次の言葉を待った。

「…ハッカー」

清香に飲み物を注いだコップを手渡しながら呟くクリフォード。

清香はきょとんとしてコップに口を付けた。
爽やかなピンクレモネードの香りが口いっぱいに広がった。

『すごいじゃん!』

思ってもみなかった反応にクリフォードは眉を寄せた。

「ハッカーだぞ?世間的には犯罪者だろ」

清香は首を傾げた。

『それは世間が悪い。ハッカーの元々の意味はコンピューターに精通してる人でしょ?』

クリフォードは驚いて清香を見つめた。

『ハッカーの中でも悪事をはたらく人はクラッカーっていう区分がある。マスコミがそれらを同一のように扱うからダメなんだよね』

「知っていたのか」

『偶然だけどね。弟が機械に弱いからそれを補うためにコンピューターの知識を出来る限り詰め込んでただけだよ』


それを聞くと、クリフォードは笑った。

「やっぱりお前のことが好きだ」


清香も笑った。

『私も好きだよ。とっても尊敬してる』


クリフォードは再度ピンクレモネードを煽った。


「ああ」


今は、それでいい。


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