試合は13時から始まる。
クリフォードはそういうと、少し遠くの駐車場に止めていた大型の車へと清香を連れて行く。
『り、リムジン!?クリフォードってお金持ちなんだね…』
当然だと言うように鼻をふんと鳴らすクリフォード。
「王族の血筋だからな」
『嘘でしょ』
リムジンに乗り込んだ清香はクリフォードの言葉に即答する。
「ハッタリだよ。それっぼく振る舞えば皆信じるってもんだ」
『ハッタリって私に言っちゃっていいの?』
広々としたシートに我が物顔で座るクリフォード。
いや、クリフォードのものだろうから文句は言えないんだけど。
「お前は特別だ」
『日本人だしね』
「そういうわけじゃねーよ」
ため息をつくクリフォード。
それを見て清香は首を傾げた。
『じゃあクリフォードのお父さん何してるの?』
クリフォードは顔をしかめる。
もしかして地雷だったのだろうか。
『ごめん!なんでもない!』
「…いや、別に言うのが嫌な訳じゃねえんだよ」
クリフォードは目を背けると近くに置いてあった飲み物をコップに注ぎ、それを煽った。
その飲み物は何なんだろう。
そう思いながら清香はクリフォードの次の言葉を待った。
「…ハッカー」
清香に飲み物を注いだコップを手渡しながら呟くクリフォード。
清香はきょとんとしてコップに口を付けた。
爽やかなピンクレモネードの香りが口いっぱいに広がった。
『すごいじゃん!』
思ってもみなかった反応にクリフォードは眉を寄せた。
「ハッカーだぞ?世間的には犯罪者だろ」
清香は首を傾げた。
『それは世間が悪い。ハッカーの元々の意味はコンピューターに精通してる人でしょ?』
クリフォードは驚いて清香を見つめた。
『ハッカーの中でも悪事をはたらく人はクラッカーっていう区分がある。マスコミがそれらを同一のように扱うからダメなんだよね』
「知っていたのか」
『偶然だけどね。弟が機械に弱いからそれを補うためにコンピューターの知識を出来る限り詰め込んでただけだよ』
それを聞くと、クリフォードは笑った。
「やっぱりお前のことが好きだ」
清香も笑った。
『私も好きだよ。とっても尊敬してる』
クリフォードは再度ピンクレモネードを煽った。
「ああ」
今は、それでいい。
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