16th down


一休と清十郎の一騎打ち。


清十郎は一休をマークするが、一休は逆に曲がり、清十郎はそのフェイントにつられ、少し体勢を崩す。

一休は清十郎を振り切ったと思い、雲水からのパスを受け取ろうとする。

その瞬間、体勢を立て直した清十郎がそのボールを弾き飛ばす。

しかし一休はボールをギリギリでカバーし、倒れ込んだ。


ベンチに座っていた桜庭は冷や汗を流す。

「レ…レベルが違う」

『二人とも天才だからね』

「こんな天才達の戦いに俺なんかが…」

桜庭の台詞に対して虎吉が怒る。


攻守交代し、清十郎が戻ってくる。

清香はすぐに清十郎にドリンクを渡し、一休のことを聞いた。

『清十郎、さっき一休と当たったときどうだった?』

「…やつは天才だ。俺がボールを弾いたとき、すぐにその手はボールを追っていた」

人を贔屓目に判断しない清十郎。
やはりこれは本当のことなのだろう。

『私が知っていたときよりも動きが良くなってた』

「しかし俺を振り切った後に油断したな。もし己への慢心がなければ俺はボールに触れることは出来なかった」

『清十郎の反応も凄かったよ』

清十郎は何も言わずに清香を見た。

『なに?』

「いや、なんでもない」

清十郎の反応に疑問をもちながら清香は試合展開を見た。


再度攻守交代し、清十郎がフィールドへ向かう。

ゆっくりと帰ってくる桜庭。

ベンチに座った桜庭に向かって、庄司がおもむろに話し始める。

「雲水は…天才の弟と比べられ続けて育った」

清香はハッとして庄司を見た。

庄司は目で清香に合図をすると、そのまま桜庭を向く。

「物心つく頃には知ってたはずだ。才能ってものの存在。そして自分にはそれがないことも」

清香は桜庭を見た。

きっと自分と雲水を、清十郎と阿含を重ね合わせているんだ。

清香はそう考えた。

「だが奴は逃げなかった。”最強の凡人”を目指して、今でも己を磨き続けている」

清香は桜庭を見た。
その目はしっかりと清十郎を見据えていたように思えた。


タッチダウンという声が清香の耳に届いた。

結果は41対3。

神龍寺の圧勝だ。


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