一休と清十郎の一騎打ち。
清十郎は一休をマークするが、一休は逆に曲がり、清十郎はそのフェイントにつられ、少し体勢を崩す。
一休は清十郎を振り切ったと思い、雲水からのパスを受け取ろうとする。
その瞬間、体勢を立て直した清十郎がそのボールを弾き飛ばす。
しかし一休はボールをギリギリでカバーし、倒れ込んだ。
ベンチに座っていた桜庭は冷や汗を流す。
「レ…レベルが違う」
『二人とも天才だからね』
「こんな天才達の戦いに俺なんかが…」
桜庭の台詞に対して虎吉が怒る。
攻守交代し、清十郎が戻ってくる。
清香はすぐに清十郎にドリンクを渡し、一休のことを聞いた。
『清十郎、さっき一休と当たったときどうだった?』
「…やつは天才だ。俺がボールを弾いたとき、すぐにその手はボールを追っていた」
人を贔屓目に判断しない清十郎。
やはりこれは本当のことなのだろう。
『私が知っていたときよりも動きが良くなってた』
「しかし俺を振り切った後に油断したな。もし己への慢心がなければ俺はボールに触れることは出来なかった」
『清十郎の反応も凄かったよ』
清十郎は何も言わずに清香を見た。
『なに?』
「いや、なんでもない」
清十郎の反応に疑問をもちながら清香は試合展開を見た。
再度攻守交代し、清十郎がフィールドへ向かう。
ゆっくりと帰ってくる桜庭。
ベンチに座った桜庭に向かって、庄司がおもむろに話し始める。
「雲水は…天才の弟と比べられ続けて育った」
清香はハッとして庄司を見た。
庄司は目で清香に合図をすると、そのまま桜庭を向く。
「物心つく頃には知ってたはずだ。才能ってものの存在。そして自分にはそれがないことも」
清香は桜庭を見た。
きっと自分と雲水を、清十郎と阿含を重ね合わせているんだ。
清香はそう考えた。
「だが奴は逃げなかった。”最強の凡人”を目指して、今でも己を磨き続けている」
清香は桜庭を見た。
その目はしっかりと清十郎を見据えていたように思えた。
タッチダウンという声が清香の耳に届いた。
結果は41対3。
神龍寺の圧勝だ。
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