「橋の辺りなの?」
「ううん…そうかな?」
清香と別れた後すぐ、まもりとセナは橋の上を探していた。
捜し物はもちろん生徒手帳。
それがセナのポケットから見えているのをまもりは気づいていない。
セナは焦っていた。
蛭魔からアイシールド21のユニフォームに着替えろと言われたから席を立ったのに、まもりがいては着替えることができない。
セナはこの状況をどうしようか考えを巡らせていた。
そのときセナの視界には道着を着たドレッドヘアの男が写った。
その男はサングラスを外すと、生徒手帳を探し続けるまもりに話しかけた。
「ゴメン、ちょっと。江ノ島フットボールフィールドってどこかな?」
まもりは急に話しかけられ、目線を上に上げた。
「あ、ナーガの金剛兄弟さんの…」
まもりは月刊アメフトの神龍寺特集で見た記事を思い出していた。
今日はよく道が分からない人に会うな…とも考えていた。
先ほどの清香も迷っていたではないか。
まもりは心の中で苦笑いをして、先ほど清香に言ったことと同じことを言う。
「この先まっすぐです。私はちょっと捜し物を…」
道着を着た男、金剛阿含は無理矢理まもりの肩を抱いた。
「案内してくれるんだ!優しいな、嬉しー!」
まもりはその手を払い落とそうとするが、阿含の力は強い。
「あの…私あの子の生徒手帳捜してるんで…!案内なら今ちょうど王城のマネージャーが江ノ島フットボールフィールドへ向かったので、その方に…」
まもりは阿含から突き飛ばされる。
阿含は突き飛ばした後、先ほどのまもりの言葉を思い出す。
「王城のマネージャー…清香か」
正面を向くと確かにキョロキョロしている清香らしき人物が見えた。
阿含は下で肩を押さえているまもりをちらと見た。
この女も魅力がある。
顔立ちが綺麗で、女らしく華奢だ。
この女の性格は知らないが、どちらにしろ清香の性格の方が好みだという無意識の根拠があった。
まもりに阿含が近づいていく。
そのとき、阿含の後ろに素早く何かが回り込んだ。
そして、誰かの声が阿含の耳に届いた。
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