7th down

(そのころ江ノ島フットボールフィールドにて)


「進、清香知らない?」

いつものようにウォーミングアップをしていた進清十郎。

プロテクターを付け始めている桜庭から話しかけられ、息を整える。

「いないのか」

確かに辺りを見渡しても清香の姿は見えない。

清十郎は心の中でため息をついた。

「また迷ったんだろう」

「また…ってことは、清香って方向音痴なの!?」

驚く桜庭。
今までも自分に会いに病院に一人で来ていたではないか。

清香の普段の行動からは方向音痴とは分からなかった。

「初めての土地ならば、誰かがついていないと必ず迷う」

淡々と言う清十郎。
桜庭は納得したように頷いた。

「下見に来てなかったみたいだしね」

「うむ」


清十郎はドリンクを準備していた小春へと近づく。

「若菜、清香が迷ったようだ。試合開始後30分たっても来なかった場合、連絡をとってほしい」

業務連絡のようにつらつらと無表情で述べる清十郎に驚く小春。

「わ、分かりました!」

小春は携帯を取り出し、マナーモードを切る。
すぐに清香との連絡がとれるようにだ。

無表情のまま頷くと、清十郎はまたウォーミングアップを再開した。


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