(そのころ江ノ島フットボールフィールドにて)
「進、清香知らない?」
いつものようにウォーミングアップをしていた進清十郎。
プロテクターを付け始めている桜庭から話しかけられ、息を整える。
「いないのか」
確かに辺りを見渡しても清香の姿は見えない。
清十郎は心の中でため息をついた。
「また迷ったんだろう」
「また…ってことは、清香って方向音痴なの!?」
驚く桜庭。
今までも自分に会いに病院に一人で来ていたではないか。
清香の普段の行動からは方向音痴とは分からなかった。
「初めての土地ならば、誰かがついていないと必ず迷う」
淡々と言う清十郎。
桜庭は納得したように頷いた。
「下見に来てなかったみたいだしね」
「うむ」
清十郎はドリンクを準備していた小春へと近づく。
「若菜、清香が迷ったようだ。試合開始後30分たっても来なかった場合、連絡をとってほしい」
業務連絡のようにつらつらと無表情で述べる清十郎に驚く小春。
「わ、分かりました!」
小春は携帯を取り出し、マナーモードを切る。
すぐに清香との連絡がとれるようにだ。
無表情のまま頷くと、清十郎はまたウォーミングアップを再開した。
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