その日の夜、清香の携帯に電話がかかってきた。
リビングの家族の前だったので、画面を見られないようにして慌てて自室へ戻る。
今日の桜庭のことかと思いきや、画面に写った名前は蛭魔妖一。
清香は勘違いのせいで心臓がバクバクいうのを落ち着かせて通話ボタンを押した。
「遅い」
『べ、別にいいじゃんか!』
蛭魔は喉の奥でくつくつと笑う。
「まあいい。神龍寺との試合の日、その前に太陽とうちで試合をすることになった」
『…え?太陽って、スフィンクス?』
それしかねーだろうが、と返す蛭魔。
最近パソコンを開いていないが、もしかして月刊アメフト杯の組み合わせはもう出ていたのだろうか。
清香はそのことを蛭魔に尋ねる。
「ああ!?てめえインターネットくらい開きやがれ!」
『そんなこと言われても家にないんですー』
蛭魔は清香が人間じゃないでもというように驚く。
「今時パソコン持ってないなんて原始人か」
『あ、あのねえ!うちには触れただけで機械を壊せる能力者がいるの!!』
蛭魔は納得したようにため息をついた。
そして経緯を話してくれた。
月刊アメフト杯に応募したこと
それがやらせだとわかり、アメリカに既成事実を送ったこと
本当に戦う相手を決めるためにスフィンクスと戦うことになったこと
「というわけだ」
『ふーん、そっか…こっちの始まる前にあるのか』
「面白れーだろうが。泥門みたいな弱小が太陽に、そしてアメリカに挑める機会があるなんてよ」
アメリカと聞いて、肩を震わせる清香。
『じゃあ、もう調べがついてるんだよね』
「パトリック・スペンサーのこと言ってんのか」
清香は当然のように頷く。
『パンサーくんはすごいよ』
「だがアポロは出さねーだろうな」
清香は笑った。
『だろうね。でも、私は出てほしい』
そしてもう一度あの走りが見たい。
あの無重力の走り。
「神龍寺戦、無様な戦いすんじゃねーぞ」
そうぶっきらぼうに言って、一方的に切る蛭魔。
蛭魔の応援してくれる心に感謝して、清香は携帯を閉じた。
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