『清十郎が攻撃に入るときのフォーメーション名、伊知郎が決めたよ』
ロードワークに行く直前の清十郎に話しかける清香。
清十郎はいつも通りパーカーをかぶると清香の方を向いた。
「なんだ」
『巨大弓(バリスタ)』
「…西洋の古代兵器だな」
清香はうえっと舌を出した。
『私は知らなかったのに清十郎は知ってるんだ』
もしかして授業で習ったことなのだろうか。
それならば言い逃れができない。
「高見さんから聞いていた」
清香は、え!?と清十郎を見る。
『それずるいよ!』
軽い言い合いをしながら清香と清十郎がロードワークに出かけようとしたときだった。
清香の携帯が鳴った。
清香は急いで携帯を取り出し、画面を見て驚く。
そして慌ててそれに出た。
『もしもし!?春人、どうしたの?』
春人と聞き、近くにいた高見が近づいてくる。
”清香、ごめん。今から会えるかな?”
清香は高速で頷き返す。
『ももももちろん!』
清香が電話を切るや否や、高見は内容を聞いた。
「…桜庭はなんて?」
『分かんない…けど、会いたいんだって』
行ってくるねと高見と清十郎に伝え、清香は財布を持って駅へと走った。
正面玄関には桜庭がいた。
入院がこれだけ長く続くともうファンはいないようだった。
「清香、急に呼び出して謝るよ」
清香は首を振った。
答えなかったのは、桜庭の雰囲気がいつもと全く変わって見えたため。
「俺は、全国に、クリスマスボウルへ行く」
『!』
その言葉を言う桜庭はこの間までの桜庭とは人が変わったようだった。
「虎吉と約束したんだ」
虎吉君…か。
清香は数日前の病室の少年を思い出した。
とても活発そうな少年。
なにかあったのかな。
『…うん、分かった』
「清香…?」
『春人がその気なら、私は全力でサポートするから』
桜庭は笑う。
そして勢いよく清香に抱きついた。
「良かった…!ありがとう」
抱きつかれた方はたまったものじゃない。
清香は頭にクエスチョンマークを浮かばせながら必死にこの状況を考えていた。
『あ、あの…はると?』
おずおずと桜庭に訴えると慌てて清香から離れる桜庭。
「え、あ、あの…!ごめん!!嬉しくて、つい」
お互いに顔を真っ赤にさせ、目を見ることが出来ずに黙り込む。
清香は桜庭に言葉にならない言葉を呟いて、咄嗟にその場から逃げた。
神龍寺と王城の試合まで、残り1週間。
__to be continued
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