清香は首を傾げた。
ヤマト…タケル?
日本神話にこんな神様がいた気がするんだけど。
「キヨカ、少しいいかな」
ジョンに呼ばれ、ヤマトタケルの名前を考えていた清香は思考を中断してジョンの方へと向かった。
『なに?ジョン』
「さっきのヤマトのことだ。さっきの挨拶を聞く限り分かると思うが、まだ英語もつたない。しばらくあいつの教育係をしてほしいんだ」
学校内も迷うだろうしなと付け加えるジョン。
まだ私も迷うのに…と心中考えるが口に出せるはずもなく、清香は了承した。
ベンチに座って見学しているヤマトタケルを見て、話しかけるべきか迷う清香。
それに気づき、ヤマトタケルの方から話しかけて来る。
「あの…いいかな」
つたない英語。
慌てて振り向く清香。
『え、ええ。なに?』
「キミが俺の教育係……ってキャプテンから聞いたんだけど」
ジョンは本人にも言っていたのか!と少し考える清香。
ひきつった笑みを浮かべないように気をつけながら清香は答えた。
『うん、そうだよ。清香って言うの。よろしくね』
ヤマトタケルはハッとする。
「もしかして、日本人…?」
『うん、それはジョンから聞いてないんだね』
清香は日本語で話しかけた。
一変して安心したように朗らかな笑みを見せるヤマトタケル。
「俺、大きい平和で大和、猛獣の猛で猛っていうんだ。よろしく頼むよ」
日本語で言われてやっと字が理解できた清香。
今まで片言で読んでいたことを少し反省する。
握手を求めてくる大和。
それを握り返す清香。
これが二人の出会いだった。
prev│next
(10/37)
bkm
back(表紙へ戻ります)
top
※章内ページ一覧へは
ブラウザバックでお戻りください