『あっ!アイシ…』
清香は驚いてセナを見て声を上げようとする。
しかし以前に蛭魔と約束していたことを思い出す。
本当は蛭魔は清香の秘密を握っていないのでこの約束は成立していないはずだが、そこだけは弟に似て生真面目に律儀に守っていたのだった。
『アイシ……えっと…愛してるよ!!?』
「どうしたの清香!?」
急に愛の告白を始める清香に驚く桜庭。
セナは清香が気を使っていたのだと気づき、苦笑いをした。
「えっと…君たちは泥門の?」
桜庭は目をそらし続ける清香を無視してセナとモン太に話しかける。
「えっと、アイシールド21からの見舞いの品を…」
差し出されたぐしゃぐしゃのフルーツだったものを桜庭は何とも言えない表情で見つめた。
清香はため息をつく。
せっかく春人と王城のポジションの件で話したいことがあったのに…。
『春人、また来るね』
清香はセナとモン太にこの場を譲ることにした。
まだ時間はある。
明日でもいいじゃないか。
「え、もう帰っちゃうんスか?」
モン太は申し訳なさそうに聞いてくる。
『私はいつでも来れるから。君たちとは違ってね』
ぺこりと頭を下げるセナ、もといアイシールド21にいいんだよ!と答える。
「清香…明日、来るよな?昼、病院の中庭で話そう」
少年つまりは虎吉(ネームプレートで確認した)を気遣ってのことだろう。
清香にはその心遣いはありがたかった。
あまり他の人に聞かれたくはなかったからだ。
『じゃあね』
清香はそのまま振り返らずに病室を出た。
prev│next
(16/21)
bkm
back(表紙へ戻ります)
top
※章内ページ一覧へは
ブラウザバックでお戻りください