自分が不甲斐ないと言い、走って帰る清十郎をバスの中から見つめる。
何故あんなにストイックなのだろう。
監督と何かあったということは少し聞いていた。
庄司監督は厳しく、その練習方針に着いていける者は少ない。
それは日々の練習を見ていてよく分かっていた。
入ったばかりの夏合宿で、なにがあったのだろう。
元々清十郎は真面目だったが、それに拍車がかかっていた。
横を見るとうつらうつらとする高見が目に入る。
選手は多くが疲れきって寝ていた。
しかし清香は目が冴えていた。
もし疲れきっていたとしても双子の弟があのように走っている最中にのうのうと寝ていられなかった。
清香の脳裏で清十郎と一人の男の姿が重なった。
赤みを帯びた髪に、清十郎より高身長なその姿。
清香は目を細めた。
探している人と弟を重ねてしまうなんて、どうかしている
清香は自嘲気味に笑うと目を伏せた。
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