進清十郎誕生日番外編
今日の授業がおわり、清香と清十郎は桜庭とともに部活へ向かう。

桜庭は何かを思い出したように二人に言った。

「そうだ!ショーグンが買い出しを頼みたいって昼休みに言ってたんだよ」

清十郎は首を傾げる。

「…昼休みはお前とずっと一緒にいたが、監督は来ていなかっただろう?」

「えええっと!そ、そう!トイレに行く途中に会ったんだよ!」

清香も清十郎同様に首を傾げる。

『なんで春人じゃなくて私達に頼んだのかな』

「ほ、ほら!二人はいつもロードワークに出るでしょ!?多分そのせいだよ!」

まあ構わないが、と桜庭の言葉を受け入れる清十郎。

清香も肩をすくめて納得した。



『えっと…テーピングは、っと』

「清香、コールドスプレーは見つけた」

『あ、ありがとう!』

行く前に桜庭から手渡されたメモにチェックを入れながら、清十郎の持ってきたコールドスプレーをカゴに入れる。

「あとは何が残っているんだ」

『えっと、プロテインかな。お徳用だってさ』

「向こうで見た」

清十郎は足早にプロテインコーナーへと向かっていった。

清香は固定用テーピングと緩衝材用のテーピングを選んでカゴへ入れた。



買い物がおわり、猫山くんから借りた自転車のカゴに乗り切らないほどの荷物になる。

「どちらにしろロードワークは出来ないようだな」

『まあ筋力アップ程度かな』

清香は清十郎の言葉に苦笑いする。





「皆!準備出来てる?」

桜庭は清香達を見送った後、急いで部室へ向かった。

「お前な…前日から準備し始めたのにそんなに早く出来るはずないだろ」

3年の鏡堂がため息をつく。

「そんな!確かに気づかなかった俺が悪いですけど…」

「桜庭、安心しろよ。まだ時間はあるんだろう?」

落ち込む桜庭を慰めるように高見が話しかける。


今日は7月9日。
王城メンバーにとっては、ある意味重要な日であった。



「重くないか」

『うん、これくらい平気。どちらかというと自転車の方が邪魔かも』

歩いてくればよかったよ、と少し後悔する清香。

しかし猫山の好意で貸してもらっているのだからそれをむげにはできない。

「それにしても何故俺達だけが買い出しへと行かされたのか」

『監督には何かの考えがあるんじゃない?』

「そうだろうな」

清香はなんとなくこの会話がおかしくて笑ってしまう。

『おつかいなんてお母さんに小学校のとき頼まれて以来だね』

「あのときは食材の場所が分からなくなり、お前が泣いたのは覚えている」

清香は慌てて清十郎の口をおさえる。

『そういうことは覚えてなくてもいいの!恥ずかしいでしょ!!』

「俺が店員を呼ぶことで解決したからいいだろう」

清香は清十郎のせりふに対して落ち込む。

『私って本当に姉なのかなあ…』

清香は清十郎をちらっと見た。

『あーー!!今清十郎笑ったでしょ!!』

「…」

黙り込む清十郎。

図星なのだろうか、少し目線をそらした。




「あーー!!大田原さんなにやってるんですか!!」

ばふっとおならをする大田原を見た桜庭は叫んだ。

「ばっはっは!!ケーキを味見しているんだ!」

「それあの二人に食べさせるためのものなのに!!」

桜庭は落ち込む。

今からケーキを買いに行っては間に合わない。
この食べかけのケーキを出すしかないのか…!!

1年の猫山が部室のドアを開け放ち、桜庭に向かって叫んだ。

「桜庭さんっ!二人が栄光橋を渡っています!」

桜庭は驚いた。

「早くない!?普通あと30分はかかるだろ!」

「進ならこの早さも考えられないことはないな」

高見は苦笑しながらいう。

「仕方ない。まだ完全に準備はできていないが、皆配置についてくれ」




『ちょっと待ってて!駐輪場にとめてくるから』

清十郎は頷く。

鍵をかけ、カゴにのせている荷物をかかえる清香。

「重そうだな」

『清十郎、甘やかさないでよ。私だってこれくらい持てるんだから!』

清十郎は両手に一つずつ、清香は両手で袋を一つ持つ。

「扉を開けられないな」

扉の前に立ち尽くす二人。

『私が開けるね』

片手で荷物を持ち直し、ドアノブを捻ろうとする。

するとそのドアノブがすっと奥へと吸い込まれ、ひとりでに扉が開く。

清香は前に倒れそうになる。


そのときだった。




「誕生日、おめでとうー!!!!!」


パァンとクラッカーが鳴らされ、清香と清十郎はお互い顔を見合わせる。

『え?』

「…そういえば俺たちの誕生日だな」

清香は清十郎にいわれ、初めてそのことに気づく。

『そうだった!』

二人が部室を見渡すと、飾り付けの途中だろうか、折り紙の飾りが至る所に落ちている。

「二人とも買い物早いんだもん。準備が間に合わなかったよ」

桜庭は二人を奥へと促す。

「これ、二人のケーキだよ。大田原さんが食べちゃったけど…味は変わらないから!」

二人は黙り込んでいる。

桜庭は疑問に思い、二人を見つめた。

『…ちょっと感動したかも』

「うむ」

清香と清十郎はとても驚いていた。

まさか自分たちの誕生日を祝ってくれるなんて…。

『あ、清十郎泣きそう?』

「そんなことはない」

清香は隣にいた清十郎をのぞき込んで尋ねた。
即否定する清十郎。

「喜んで貰えてよかったよ」

高見は皆の使い終わったクラッカーを回収しながら二人に笑いかけた。


『清十郎、なんか変な感じだけど…誕生日おめでとう!』

「ああ、誕生日おめでとう」




Happy Birthday!!!


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