5th down
試合が始まった。

西部の攻撃からだ。

もちろん陣形はショットガン。

清香はQBのキッドを見つめた。

目はパス要員全てに均等に向けられている。
流石に視線で次のパスターゲットを見抜くには無理があったか、と清香はため息をつく。

その清香の肩をたたく人物。

高見だった。

「お疲れ、昨日は色々調べててくれてたんだろ?監督から聞いたよ」

『これくらい調べたうちに入らないよ。役に立たないデータを無駄だとは思わないけど、実際に試合に応用できるほどのものは得られなかった』

高見は清香の視線の先に繰り広げられている試合の様子を目を細めて眺めた。

「清香、データも大事だけどね。本当に大事にしなきゃいけないのは王城のために行動してくれる君たち自身だよ」

『え…』

「若菜がいなければ、ドリンクもタオルも自分達で準備しなければいけない。清香がいなければ、わざわざ自分の目で見て判断しなければいけない」

清香は驚いて高見を見た。

「試合中は咄嗟の判断が大事だけど、根本にあるのはミーティングでの作戦だ。君には本当に皆感謝しているんだ」

だからそんなに自分を卑下しないでくれよ…。

そういって悲しそうに微笑みかけてくる高見。

清香は口をきゅっと結び、黙って頷くことしかできなかった。


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