3rd down
清香はキッドの顔をじろじろ眺めた。

『…その無精ヒゲ隠してくれる?』

「ヒゲは嫌いかい?」

ははっと乾いた笑いを返すキッド。

清香は否定する。

『そういうことじゃなくて、なんか見たことある気がして』

キッドはしばらく清香を見つめ返した、そしてすっと自分の口元を覆う

「これでいいかな」

『うん、ありがとう』

自分の記憶を思い起こす。


この顔、どこかで見たことがある。

そう、あれは何かの雑誌だ…。
何の雑誌だったっけ。

様々なスポーツの特集をしていた。
ちょうどオリンピックシーズンだったんだ。

そうだ射的のページだ!
このタレ目に特徴的な眉。

名前は思い出せないけど、なんか家系的にもサラブレッドと書いてあった気がする。

でもなんでアメフトに??


「もういいかな」

キッドは帽子をかぶりなおす。

『ああ、うん。ありがとう!思い出したよ!!』

それはよかった、と視線をそらすキッド。

清香は首を傾げる。

『ねえ、キッドは本名じゃないでしょ?本名はなんていうの』

「申し訳ないけど、それは言いたくないんだ」

清香は続ける。

『そっか、誰にだって隠したいものはあるよね』

「ああ。詮索しなかったら助かるんだけど」

『これだけ言わせて。何で射的を止めたの』


キッドの表情が凍りつく。


「…やれやれ。キミは本当に何者なんだい?」

グラウンドにたどり着き、皆バラバラに明日の試合のコンディションチェックに向かう。

キッドだけは清香の横に留まった。

「ということは、キミは知ってるんだろうねえ」

『家系が凄いってことは知ってるよ』

キッドは遠くを見つめる。

その目の先には西部の選手たち。

「今は彼らとの時間を大切にしたい」

清香も同様に選手を見た。


なんとなく、キッドの気持ちが分かっていた。

最初の飄々とした様子からは感じられない雰囲気。

それはきっと過去に大きな出来事があった証拠。

『…ごめん!さっきの忘れて!!別に過去を知りたかった訳じゃなかったんだ』

「いや、いいさ。それよりキミの名前が知りたいな」

清香は笑った。

『清香って言うの。改めてよろしくね』

「明日はいい試合にしよう」

そういうと去っていくキッド。

それを見て自然と笑みがこぼれる。


いい試合か…。
なかなか強気な発言じゃないの。


清香は踵を返し、再度駅に向かい始める。


早撃ちはそれを遠くからずっと見ていた。


prevnext

(3/21)

bkm



back(表紙へ戻ります)
top

※章内ページ一覧へは
ブラウザバックでお戻りください
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -