『アイス買おうよ』
そんな一言のせいでまさかこんなことになろうとは……。
女人禁制の神龍寺高校。
女でありながらこの学園に通っている清香はドレッドヘアの男子生徒に向かってそう言った。
「あぁ!?アイス!?」
ぐりぐりと清香の頭を押さえつけるドレッドヘアの男子生徒、金剛阿含。
『いいじゃんか。私この学校からあんまり出ちゃいけなくてさ、アイスも買いに行けないんだよ』
これは仙洞田先生が清香に言ったことだった。
女人禁制の学校に通うからには様々なことを守らなければいけない。
「…仕方ねえな」
阿含はしつこく頼む清香の要求をのんだ。
『やったあ!もちろんお金は払うからね』
「そのかわり俺の部屋で食えよ、いいな」
清香は勢いよく頷きながらも首を傾げた。
清香は阿含の部屋で待っていた。
その30分後、阿含が帰ってくる。
ほらよ、と頭上から落とされる袋。
清香はそれをキャッチした。
わくわくしながら清香は中を覗いた。
『…え』
中にはとある高級アイスが入っていた。
『ねえコレ』
「○ーゲンダッツ」
清香は阿含を困惑して見つめる。
『私、安いアイスのつもりだったんだけど』
阿含は清香の横にどかっと腰を下ろす。
「…奢りだ」
『え、奢りって、本当!?ありがとう阿含大好き!!』
清香は勢いよく阿含に抱きつく。
「てめぇいつもはこんなに甘えないだろうが」
『だって嬉しいんだもん』
嬉々として袋の中からアイスを取り出し始める清香。
阿含はそんな清香の様子をじっと見つめる。
「てめぇはアイスでそんなに簡単に動くのかよ」
清香は付属のスプーンでアイスをひとすくいする。
『そんなことないよ』
あーんと口を開け、食べようとした瞬間に阿含がそのアイスを食べる。
『あああー!!』
「値段が高いだけあるな」
『なにすんの!?最初の神聖な一口を!』
阿含は適当に相づちをうちながら、清香に言った。
「誰がこのアイスを買ってやったと思ってんだ」
清香はうなだれた。
『阿含です…』
阿含はニヒルな笑いを浮かべながら清香を見た。
「アイス食べたけりゃ俺の言うこと聞けよ?」
清香ははっとする。
『だから素直にアイス買ってきたの!?』
阿含は必死な清香を見て笑い出す。
「さっき思い浮かんだんだよ」
清香はふてくされながらもっているアイスを見つめた。
「まずはもう一度抱きつけよ」
『は、はあ!?』
そういいつつもアイスを食べたい一心で抱きつく清香。
阿含が次の命令を出そうと口を開きかけたときだった。
「あ、阿含に清和!?何故男同士で抱きしめあっているんだ!」
顔を真っ赤にした雲水が二人を玄関から見ていた。
清香ははっとして阿含から離れる。
「雲水てめぇいいとこだったのによ」
阿含は清香が女と知っているが、雲水は知らない。
そんなことはお構いなしに清香を引き戻そうとする阿含。
『えっあのっ、ごごめんね!雲水!!』
清香は阿含の腕をかいくぐり自分の部屋へと逃げた。
「阿含…どういうことだ。まさか、できているのか」
真面目な顔で尋ねる雲水に吹き出す阿含。
「雲水ちゃんまだ気づいてねーのか!!」
雲水が清香の正体に気づくまではそう時間はかからなかった。
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