「村中くん、お疲れ様」
黒撰高校野球部の○○はたった今着替え終わった村中由太郎を見て笑った。
「あ、○○先輩!なあなあ今日も俺すごかったろ?」
嬉しそうに語りかける由太郎。
顔には、スライディングをしたのか泥がついていた。
「村中くん、顔に泥がついてるよ。それに髪にも砂が付いてる」
慌てて顔を拭い、髪を結っていた紐を解く由太郎。
○○はそんな由太郎の髪をまじまじと見つめた。
「襟足部分だけ長いんだ」
「うん!」
○○は由太郎の髪を束ねる。
そしてうなじの部分から手を入れ、ゆっくりと梳き始める。
「うわ、くすぐったいよ!」
身をよじる由太郎。
「これだけ長かったら三つ編みも出来そうだね」
由太郎はぷくっと頬を膨らまし不満そうな声を出す。
「よく母ちゃんに遊ばれるんだ」
○○は慌てて謝る。
「ごめん!嫌だった?」
「全然嫌じゃない!」
声を張り上げる由太郎に、○○は驚く。
由太郎は頬を赤くして言った。
「ってか俺、○○先輩のこと好きだから!好きな人に髪を触られて嫌な男なんていねーよ!」
はっと口を押さえる由太郎。
「あー!い、今の、今の!無し!」
慌てる由太郎を見て、○○は微笑む。
「私も由太郎くんのこと好きだよ」
「い、今由太郎くんって言った…のか」
頷く○○。
由太郎はさらに顔を赤らめた。
「先輩…」
「由太郎くんから告白されるなんてね」
由太郎はガバッと○○に抱きつく。
「○○先輩!大好きだぞ!」
「うわっ」
倒れそうになる○○。
寸前のところで踏みとどまる。
○○は由太郎の頭を撫でる。
「子供扱いするなよなー」
「由太郎くん、これからもよろしくね」
そういって抱きしめ返す○○。
(手櫛)
「ゆゆゆゆゆ由太郎…」
「魁ちゃん、今ユタ坊は大人の階段を登ってんだ。邪魔するなんて野暮なことはしちゃいけねーよ」
「(…拙者より先に登られたのだが)」
魁と小饂飩がその様子を遠目から眺めていたのを、二人が知ることはなかった。
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