伝説の始まり
御門が新入生と二、三年に集合をかける。

すでに集まっていた二年生たち。
整列せずにばらけている。

私はさっと新入生のデータをまとめていたバインダーを手渡した。

ありがとう、と王子スマイルで微笑む御門。
いちいちキラキラオーラは出さんでもいい!


御門が自己紹介を始める。

御門によると、監督の意向で50名を17名に厳選したらしい。

ということはここにいる17名はおよそ3倍の倍率のなか勝ち進んできた子たちってことか。

これは期待できそう。


一年生が一人ずつ自己紹介を始める。

明神くんから始まり、兎丸くん、辰羅川くん、犬飼くん…司馬くんは無口なのね。


数人が続いて、残り二人。

私が直前にファイリングした子津くんと猿野くんだ。

御門は先ほどバカにされた恨みなのか、猿野くんを無視する。

こういうところは子供っぽいんだよね。


「監督から聞いて、一つ耳を疑ったことがあるんだ」


急に真剣になる御門。

御門は、ちらりと私の方を見た。

私に関係があるのだろうか。


「この中にあの偉大なる村中選手の伝説を破った者がいると…」

「それはこのわたくし、猿野天国であります!」

『…!!』


私は驚いて、持っていた空のファイルを落とす。

それに気づいた同じ三年マネージャーの柿枝鶫がファイルを拾ってくれた。


「おい、大丈夫か?」

『え、う、うん!大丈夫』


慌てて時計を振り向くと、確かに割れ目が増えている。

まさか猿野くんが紀洋おじさんの伝説を破るなんて…


私は背筋がぞくりとした。

これは、早く話さなければ。

由太郎はきっと悔しがるに違いない。

親父の伝説は俺が破るって息巻いてたから。




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