ーーー
『魁、私仮名っていうの、よろしくね!』
脳裏にはあの頃、あの幼い頃が浮かんでいた。
お父さんに連れてこられて、初めてのおじの家に遊びに行ったんだっけ。
そこで兄弟にあったのだ。
「よろしく頼む」
あのときはまだ声変わりしていなかった。
でも、凛々しさは今と一緒だったな。
異性に弱かったのも今と同じ。
話せる女の子は私だけ。
そう思っただけでとても嬉しかったのを幼心に覚えている。
「仮名、大きくなったら拙者のために毎日味噌汁を作ってくれ」
それが幼いときに魁から言われた言葉で印象的なものだ。
今思えば笑ってしまう。
小学生が言う言葉だろうか。
あの時の私は意味がわからなかった。
意味を知ったのは中学に上がってから。
もちろん冗談ということは知っていたけれど。
そうだ。
あのときから、もう。
私は魁のことが好きだったんだ。
あのとき私はなんて返したっけ。
『ーーーーーー!』
そんなことはどうでもいい。
私は、昔からずっと、魁に恋していたんだ。
prev│next
bkm
back
top