大切なただの幼なじみ
合宿が始まり、私は水汲みに勤しんでいた。

この学校マネージャーいないって大変だったんだろうなあ。

水筒を自分で持ってきて自分で汲むんでしょ?

やってられないよね。

だからこそ、私が出来ることは何でもやるつもり。

魁もちらちらとこちらを心配そうに見ている。

私は軽く手を振る。

魁は少し驚いた顔をするが、すぐに笑みを浮かべる。

「ねーちゃん!水くれ!」

私と魁との目線の間に入り込んでくる由太郎。

笑って水を手渡した。

横にいる沖くんにも。

上級生の練習も一段落ついたようで、小饂飩くんがこちらに歩いてきた。

疲れていないように振舞ってはいるが、汗だくだ。

クーラーボックスに入れておいたタオルも一緒に手渡す。

「かーっ!冷てえ!!仮名ちゃん気が利くねぇ!」

『伊達におじさんから教えられてないからね』

水をごくごくと飲む小饂飩くんの様子を眺める。

そういえばあまり魁がこんな風に豪快に水を飲んでるとこ見たことないな。

どんな感じなんだろう。

魁を探そうとすると、まだマウンドに立っている。

振りかぶり、一球一球がネットにあたり落ちてゆく。

やっぱり、かっこいいなぁ。

「かっこいいなぁ、魁ちゃん」

私はびくりと肩を震わせる。

『えっ?えっ?』

「ぶっちゃけ仮名ちゃんって魁ちゃんのことどう思ってんだ?」

にやりと笑う小饂飩くん。

私は困ったように笑い返した。

『大切な……ただの、幼なじみだよ』

「そっか」

『…うん』

「なら、どうしてそんな悲しそうな顔するんだ?」

小饂飩は私の額に持っていたドリンクをコツンとあてる。

『っ』

「そんな顔するくらいなら自分に正直になったらどうだ?」

『今の関係を壊したくない。魁に嫌われたくないもん』

そう、わたしは魁のことが。

『だって、魁のこと、好きだから』

控えめに口に出したそれを聞いた小饂飩くんは顔をほころばせる。

「どうだ?ピーーーッとスッキリしただろ!?」

そっか、小饂飩くんは最初から分かってたんだね。

『ありがとう、小饂飩くん』



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