皆の前でたじろぐことなく、私は自己紹介を始めた。
『みんなはじめまして。私は村中仮名、この黒撰の監督、村中紀洋の姪です』
選手の一人が叫ぶ。
「ねーちゃん!!なんでここにいるんだ!?」
金髪で緑色の目、由太郎だ。
『学年は三年、魁と由太郎とは従兄弟です』
「なんだ、魁ちゃんの彼女じゃねーのかよ」
一人が残念そうにいう。
虎のような模様の頭。
坊主のようで坊主でない。
不思議な髪だなー。
『明日から三日間、臨時マネージャーになるんで、よろしくね!』
そういって私は笑う。
部員達が一斉に「っす!!」と叫ぶ。
野球部らしいというか、なんというか。
そのあと、すぐに解散になった。
しかし、皆自室に帰ろうとはしない。
先程私と魁のことを彼氏彼女だと言った一人が私のところにくる。
「超絶最高潮に可愛いじゃねぇーか!!魁ちゃんとてっきりピーーーーーだと思ってたぜ!!」
「これ小饂飩!」
私にはピー音しか聞こえなかったが、魁は顔を真っ赤にしている。
どんな言葉を言ったんだろう。
「ちげーぞ!うどん先輩!仮名ねーちゃんは俺の従妹のねーちゃんだ!」
由太郎が近寄ってきて、その小饂飩に言う。
「おうそうかユタ坊!仮名っつったな!俺は小饂飩勇、超絶最高潮にピーーーーーな男だ!よろしくな」
そう言って私の手を握る小饂飩君。
「仮名、小饂飩は女性が大好きなのだ、気をつけろ」
魁がぼそっと話しかけてくる。
魁がそんなに言うなんて珍しい。
「やあ、私は緋慈華汰斗肢、よろしくたのむよ」
『え、なんて?』
「緋色の緋、慈悲の慈、華美の華、淘汰と汰。そして北斗の斗に肢体の肢だよ」
『いや、ごめんよく分からない』
この、ひじかたとか言う人は何を言っているのだろう。
なんだか服はボロいが、仕草のひとつひとつはとても美しい。
「本名は泥方歳だ」
またもや魁がボソリと呟く。
『ああ、泥方君ね』
「魁くん!君はなんということを!!」
よくわからないが、緋慈華汰君はまあ面倒な人らしい。
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