『監督ーここにいますかー』
がらりと監督の部屋のドアを開けるとそこにいたのは辰羅川君と犬飼君。
そういえば監督の部屋を医務室にしたんだっけ。
辰羅川君が見ているのは……。
「あっ、こ、これは」
『皆のデータでしょ?私も集めるの苦労したんだよねー』
そうしてそのデータを見ようとすると、後ろから肩を叩かれる。
「夏の大会のレギュラー決め」
『あ、監督』
「この合宿の本来の目的だ」
辰羅川君は驚いている。
選手には知らされてないもんね。
マネージャーでも気づいてるのは私と鶫くらいだろうけどね。
『明日は攻撃練習とのことでしたけど、どんなことするんです?』
「お前そのためにここに来たのか?」
監督は呆れて笑う。
そんな呆れられてもなー。
私も野球大好きだから、明日の準備できることはやっとこうと思っただけなのに。
「そういうところ、やっぱ父親の家系譲りだな」
『あー、そうですね。父も野球大好きでしたし』
その話を聞いていた辰羅川君は疑問に思ったのか尋ねてきた。
「仮名先輩の父親の家系……どういうことですか」
『あー言っていいのかな』
そう言って監督の方を見ると、好きにしなと笑われた。
『私の名字、村中でしょ?おじさんがとあるプロ野球選手なんだよね』
辰羅川君は気づいたようだった。
「もしや、村中紀洋選手!?」
『うん、十二支OBのね』
「はぁ……それは遺伝子ですね」
そう言って納得したように頷く辰羅川君。
「このことは先輩方は知ってらっしゃるんですか?」
『うん、御門だけね』
「牛尾キャプテンだけですか!?」
辰羅川君は驚く。
『御門は中学からの知り合いだしね!』
そういやそうだったな、と笑う監督。
私は小学校が魁と由太郎と一緒だっただけで、その後はずっと御門と一緒だ。
「その、牛尾キャプテンとは付き合っていらっしゃるのですか」
辰羅川君は聞きにくそうに言う。
なんか、それ色んな人に言われるんだけどなー。
『全然』
即答。
監督は何故か爆笑する。
夜は更けてゆく。
『あれ……こんな夜更けに、メール?』
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