僕が猪里くんを見ていたことを仮名は気づいていたようだった。
仮名のことを話したとたんに頬を紅潮させた猪里くん。
そんな猪里くんを見て、自分は何を思っていた?
そう、僕は嫉妬していたんだ。
猪里くんに仮名の隣の席を譲った。
いや、違う。
譲らなければならなかった。
心の中でもやもやしたものが渦巻いていた。
そのような状態で仮名の隣になんていれるはずがないじゃないか。
ただでさえレギュラー決めの合宿で僕たちの神経は張り詰めている。
そんな状態なのに、仮名の隣になんていてはいけない。
…っていう言い訳をしても僕自身がみっともないということは知っている。
僕は仮名から一瞬でも逃げた。
だからこそ、彼女が目覚めたときに体が勝手に動いていた。
仮名が目覚めたときに、そんなみっともない、不甲斐ない自分を見せたくなかったから。
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