バスの振動が心地いい。
高速道路のコンクリートは滑らかで、酷い凹凸がないため、私はぐっすりと寝てしまっていた。
止まった気配がしたので、目をゆっくりと開ける。
頬が誰かの肩の上にあるのかな…………あれ?私の隣って誰かいたっけ?
頬をその人物の肩に乗せたまま、少し視線を上へずらす。
そこには…
『い、猪里くん!?』
はっと口を閉ざす。
彼もまた寝ていた。
私が寝る前は真剣そうな表情で窓の外を眺めていた猪里くん。
何故私の隣に?
いや、とっても気持ちよかったんだけどね!
私の声に気づいたのか、御門が前の方の席からやってきた。
「やあ、起きたみたいだね」
『これは御門の仕業なの?』
御門は微笑んだ。
「倒れそうなキミを心配してのことだ。他意はないんじゃないかな」
御門の目が猪里くんを捉えた。
『御門…どうしたの?』
「いや、なんでもないよ」
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