少しイライラしている様子の鳳明さんを横目に、私はご飯の準備を始める。

学校は早く終わって、今日はバイトもない。

ちょうど買い出しも終わって、晩ご飯の準備をしようと思っていたときだった。

『鳳明さん、なにかリクエストあります?』

「りくえ……?」

『あ、注文です』

そっか、鳳明さんは昔の人だからそりゃ外国語分かんないよね!

日本語も鳳明さんにとっては外国語のはずなんだけどなあ。

「注文か、別にない」

『そうですか』

今思うと男の人に料理を作ってあげるなんて、兄と父に作る以来じゃないだろうか。

そうかんがえると少し嬉しくなった。

心の中で意気込むと腕まくりをした。

鳳明さんはテレビをずっと見ている。

スッと背筋を伸ばして胡座をかいている様子はやはり軍人らしさが出ている。

昨日の残り物のおひたし、ぱっと作った野菜炒め、鶏肉の照り焼きをテーブルに並べる。

二人分を並べると、少し心がほっこりしてしまう。

『あの、鳳明さん?できましたよ』

鳳明さんはその声に気づくとすぐにこちらにやってきた。

「良い香りが先程から漂っていた」

そして私の立っているほうとは別の椅子に座る。

順応が本当に早いと思うのだが、鳳明さんは不安ではないのだろうか。

正直私は鳳明さんをもとの世界に戻せるような神通力もないし、不思議な力も持ってはいない。

どうしようもないのである。

『鳳明さん、私の作ったご飯に毒が入ってるとか考えないんですか』

「なぜそうする理由がある。考えれば分かることだ」

少し睨むようにこちらを見つめる鳳明さん。

私は少し笑う。

『そうですね』

さあ、食べましょう。

そういうと鳳明さんは置いてあった箸を手に取った。


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