キングダムのキャラクター。
鳳明さんがそうだと分かってからも私の頭は不思議と落ち着いていた。
慌ててもどうしようもない。
これは夢かもしれない。
そうではないかもしれない。
どちらにしても鳳明さんがすぐにここから消えることは無いのだ。
それならば私はこの鳳明さんという人間を受け入れるしかない。
「さくら……といったな。俺は何故かこの場所に来てしまったらしい。非現実的なことは認めたくはないが、お前が嘘をついているとも思えん」
『ついてませんからね』
鳳明さんは頷く。
ジャージとTシャツの鳳明さんが見られるなんてすごく新鮮だ。
私はそんな鳳明さんを眺めながら続けた。
『とりあえず鳳明さんが生活に困らないようにはできますけど、あなたを魏に送るという事はできませんよ』
「……だろうな」
鳳明さんは頭を抱えてため息をつく。
よく見ると綺麗な髪には泥や土がついている。
先程まで戦場にいたのだろうか。
『とりあえず、お風呂にでも入りますか?』
鳳明さんがきょとんとした顔を見せる。
私はついつい笑ってしまった。
湯をたっぷりと溜め、私は疲れが取れる(らしい)入浴剤を入れる。
白く濁ったお湯が張られ、私は鳳明さんを呼んだ。
ちなみに鳳明さんは案の定テレビに釘付けになっている。
リモコンをいじりながらテレビの裏を覗いたりテレビに話しかけたりしている。
なんというか、本当に大きい子供を相手にしている感覚だ。
『鳳明さん、テレビもいいですけど風呂が沸きましたので入ってください』
「あ、ああ」
びくっと肩を揺らしながらリモコンを後ろに隠し、こちらを見る鳳明さん。
エロ本読んでいるのを見つかった男子高校生じゃないんだからそんなにびっくりしないで。
「湯はありがたい」
昔はお風呂なんてあったんだろうか。
温泉ならあったかもしれない。
鳳明さんを風呂場に連れていくと、少し嬉しそうにしている。
なんだ鳳明さん、可愛いんですけど。
「この湯に浸かるのだな」
『あ、はい。あとはシャンプーとかリンス、ボディソープは自由に』
そういった後に気づいた。
『シャンプーっていうのは髪の汚れをとる液体で、リンスは髪を綺麗にする液体、ボディソープは身体の汚れをとる液体です』
よく淡々と言葉が出てきたなと感心する。
「ああ、助かる」
それでは、と勢いよく服を脱ぎ始める鳳明さん。
『なっ、鳳明さん!』
私は慌てて風呂場から出てゆく。
「何故そのように焦るのだ」
『いや、私女ですから、そこらへん気を使って下さい!!』
鳳明さんは少し笑う。
「ああ、そういえばそうだな、すまない」
え、なに?鳳明さんは私に喧嘩でも売ってる?
遠まわしに女っぽくないと言われ、私は少し腹が立った。
しかし鳳明さんに怒っても仕方ないのでご飯の準備に取り掛かる。
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