02 和解と真実
とりあえずこの男、鳳明さんとは和解することが出来た。
どうやら私のことを敵ではないと分かってくれたらしい。
その血のはねた甲冑も脱いでもらった。
中には女性のワンピースのようなものを着ていて、一瞬どうしようかと思ってしまった。
しかし平然としているので恐らく鳳明さんの国では普通だったのだろう。
『鳳明さんは外国の方なんですね』
それにしては日本語がお上手だ、と笑う。
鳳明さんは軽く首を傾げる。
「がいこく?俺は魏から来たと言っておるだろう。お前のこの住んでいる国こそ、俺にはどこなのか見当もつかぬ。見たことがないものばかりだ」
鳳明さんはワンピースを脱ぐ。
下から現れたのは傷だらけの上裸と股間部とお尻の部分がざっくりとあいたズボン。
いや、ズボンとしての役割果たしてくれ。
ちなみに下には褌のようなものを履いていたので安心した。
傷はすべて古傷のようだが、いったいこの人の職業は何なのだろう。
甲冑を来ていたから戦う人という事は分かるが。
『えっと、兄の服でよければ着てください』
私は兄が使っていた部屋の中にあった、兄が残していったジャージとTシャツを取りに行った。
「……どのようにして着るのだ」
Tシャツを持って不思議そうにこちらをみる鳳明さん。
『え、分からないんですか』
薄々感じていたが、もしかしてこの人、この時代の人ではないんじゃないだろうか。
だって掃除機も知らないし、ちゃんとした下着も履いてないんだもん。
そこの穴に下から頭を突っ込むんですよ、とジェスチャーを使って教えながら、私はそう思った。
どうやら順応力は高いようで、鳳明さんはすぐにTシャツを着ることが出来た。
私は軽くため息をつくと、テレビのリモコンを手に取った。
多分これを付けると鳳明さんはまたびっくりするんだろうな。
私は軽く目を細めた。
なんで鳳明さんは私の家に来たのだろう。
ん?
待てよ。
『鳳明さんは呉鳳明でしたよね』
「なんだ、突然」
ジャージに足を通し終えた鳳明さんは驚いてこちらを見る。
足元にはあの謎ズボン。
『鳳明さん、お父さんはもう亡くなってたりしますか』
「なぜ知っている」
私の心臓がどくどくと脈打つのが分かった。
『お父さんは呉慶さんだったり…?』
「我が父呉慶を知っているのか」
その言葉ではっきりした。
なんで私は今まで気づかなかったのか。
『え、キングダムの?』
「えきんぐだむの、とはなんだ」
私は気が遠くなるのを感じながら盛大にため息をついた。
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