■ 出会い
「あらあら、アジアンね!」
マダムマルキンと名乗った女性は私を台に立たせると杖を一振り。
様々な採寸道具が私の周りを飛び回る。
それに目移りしていると、後ろから軽い笑い声が聞こえた。
その爽やかな男性の声に、私は慌てて振り向く。
そこにいたのは薄手のカッターを着たハンサムな青年。
『えっと、あなたは?』
「ほら、前を向く!」
マダムマルキンが私にぴしゃりと言い、私は急いで前を向く。
後ろにいた青年が前に回り込んでくる。
「僕はセドリック。セドリック・ディゴリーだ」
はい!終わりよ!と台から下ろされる。
『セドリックよろしく。私はユウリ・カミヤマ、日本人だよ』
「よろしくユウリ。日本人には初めて会ったよ。今年からホグワーツに?」
うん、と頷く。
『色々あって、今年からホグワーツに編入するんだ』
そう振舞えと言われていた私は、スネイプ教授と作り上げた設定を思い出す。
「そうなんだ、何年?5年だったら嬉しいな」
『私が13歳だから3年かな』
セドリックはとても残念そうに肩をすくめる。
「残念だ、せめて同じ寮になりたいな」
マダムマルキンから制服と通常時のローブ3着、マント、帽子を受け取ると代金を支払う。
それらを全てバッグにいれる。
「すごいバッグだ」
『これ、私の保護者からプレゼントに貰ったんだ』
そういってバッグを撫でる。
スネイプ教授から初めての贈り物だ。嬉しくないはずがない。
「そうだ、良かったら良かったらパーラーでアイスでも食べない?ホグワーツのことを教えてあげられるんだけど」
ふと外で待っている短気な教授が浮かんだ。
『ご、ごめん!外に保護者がいて、すぐに行かないと怒られちゃう』
セドリックは走ろうとする私の手を掴む。
「待ってくれ!手紙を送ってもいいかな」
懇願するような灰色の瞳。
私は頷くしかなかった。
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