■ とんでとんでとんで

気づいたら暗い部屋に立っていた。

私は何故ここにいるのだろう。

さっきまで何をしていたのだろう。

そうだ、夏を満喫していたんだ。

中学に入って初めての夏休み。

部活をやっていない私は完全にフリーダムだった。

勉強もさっさと終わらせ、好きな本を読む。

好きな映画を見る。
好きな音楽を聞く。
好きな服を好きな食べ物を。

そんな予定を考えていたんだ。

それなのに。


『ここ、どこ』


辺りをきょろきょろと見渡すが、見覚えはなかった。

参った、考え事をしながら歩くんじゃなかった。

おかげでこんな建物に迷い込むことになった。

…いやいや、いくら私が馬鹿でもこんなことになるはずがないだろう。


多くの絵画、多くの棚、本。

そのすべてがレトロで、アンティークで。

こんな語彙力の私をどうにかしてほしい。

正面には階段。
そこを登った先には机。

そして横には大きな赤い鳥。

見たことがない品種だ。

黒い宝石のような目をくりくりとさせ、こちらをじいっと見つめる鳥。

動物が好きな私は自然と惹かれていった。

手を軽く伸ばすと、その鳥はその手に擦り寄ってきた。

暖かい。気持ち良い。

ふんわりとした暖かい空気を含む羽毛が私の手を滑る。


「フォークスが気に入るとは、珍しいこともあるもんじゃ」


背後から急に声が聞こえる。

びくりとして私は鳥から手を退けた。


後ろに立っていたのはおじいさん。

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