■ 優しさ

新学期当日、城には先生たちが帰ってきていた。

私はその様子を地下室に通じる階段の扉から覗いていた。

『先生がいっぱい!みんなスネイプ教授みたいに暗いのかと思ってたけど、良かったなあ』

大きなお世話だ、と怒られそうだが今はスネイプ教授はいない。

私はじーっと観察していた。

大広間では先生たちが入学式の準備をしている。

私もトランクに道具を詰め込み、ローブに着替えている。

新入生用のローブは色が単調で、昔本でよく見た魔法使いにそっくりだ。

ローブの中に杖を入れ、気分は在学生。

私は楽しみになって自室に戻った。

物置とも今日でお別れ、今日の夜からはどこかの寮に配属になるのだ。

そう思うとなんだか寂しくなってきた。

研究室にはいると、教授が完成した薬品を瓶詰めしている最中だった。

『脱狼薬が出来たんですね』

「左様」

ずらりと棚に並べられた瓶を眺める。

様々なものがあり、見ているだけで楽しい。

もちろん危険だという事は重々理解しているつもりだけど。

この研究室に自由に出入りできるのも今日までなのだろう。

『教授、ありがとうございました』

改めてお礼をいう。

『見ず知らずの私に色々と教えて下さって』

スパルタ教育だったけど、魔法のことをいろいろと知ることが出来た。

『もう研究室に来て教わることは無いかもしれないから、最後に』

深々と礼をする。

「…ああ」

スネイプ教授が肩をぽんとたたいてくる。

嬉しかった。

あんなに厳しかったのに、急に優しくされると感情がついていけない。

『ありがとうっ、ございました……!』

「……勘違いしているようだが」

『へ?』

「お前にはたびたびここに来て我輩の助手をしてもらうつもりだ」

『えっ』

「お前は役に立つ。居候させてやったのだから我輩のために働くのだな」


前言撤回。


優しくなかった。

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